ヒトは今なお進化している

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先稿「遺伝子が語る人類の進化」において、我々現代の地球人の直接の祖先は、89,000年前のアフリカの草原に、少なくとも4,000人いたということを確認した。彼らが言語を話していたか、その前提としてシンボルを操る高度な精神的能力を有していたかについては、詳細はわかっていない。だがその可能性は高いと思われる。

ヒトの遺伝子の中にFOXP2というものがある。これのヴァージョンはねずみにもあるそうだが、ヒトの場合には言語と関連が深いとされる。これが人類に出現したのは200,000乃至50,000年前とされているから、89,000年前の我々の祖先が言語を話していたことは十分に考えられるのである。

だが、89,000年前の人類は、絵画や彫刻などの芸術的創造の領域には達していなかったようだ。少なくとも、その時代の遺跡は発見されていない。芸術は、ただ単にシンボルを操作するだけではなく、それを二次的に加工する更に高度な精神的能力を要求するものであるから、当時の人類は精神的には、まだ進化途上だったともいえるわけである。

この高度なシンボル操作と関連する遺伝子はマイクロセファリンというものだが、これが出現するのは37,000年前のことである。

5,800年前には、ヒトにASPMという遺伝子が出現した。この遺伝子の恩恵によって、ヒトは都市国家を作るようになり、今日に至る人類の文明の歴史時代へと突入するのである。

以上大まかに人類の過去をたどってみると、最初の人類が登場してから600万年もの期間の中で、今日の人類と直接に結びつくのは、せいぜい6000年ほど、人類の歴史全体の中で、1000分の1の長さでしかない。

地球が今日と同じ姿の気象条件に落ち着いたのは、ほぼ1万年前である。地球の歴史上それこそ一瞬ともいえる短い期間であるにもかかわらず、人類はその間に進化を続け、今日の文明社会を築きあげた。

100年に満たぬヒトの個体からすれば、人類の歴史は十分すぎるほど長く映るが、進化のパノラマに据えてみれば、ごく短い間の出来事に過ぎない。この短い間の出来事を以て、ヒトが進化の最終段階に達したと結論付けるのは性急のようだ。ヒトの進化がこのまま止まってしまうとは、到底考えられない。

むしろ「ヒトは今なお進化している」と見たほうが正しいだろう。


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