極超新星爆発の謎

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昨年(2006)の9月、アメリカの天文学者クィンブリー Robert Quimbly 博士がひとつの超新星を発見した。ペルセウス座の一隅に発見したこの天体を、博士は天文学のルールに従って、とりあえず2006GYと名付けたが、ただちに追跡研究にとりかかることはしなかった。

ところが数ヶ月経って、博士はただならぬ事態に気づいた。通常の超新星に比べて、この天体は明るさが桁外れで、しかも異常に長く光り続けているのである。通常の超新星なら明るく輝く期間はごくわずかで、数週間もすれば周囲の闇の中にとけ込んでしまうのに、この超新星は70日もの間、爆発時の明るさを持続し、その後も数ヶ月間光を失うことがない。だから、これは今までに観測されたどの超新星とも異なった、極超新星ともいうべき特別な天体である可能性が高い。

もしかしたらこの超新星は、126億年前の宇宙で展開された巨大爆発に似ているのではないかと、博士たちのグループは考え始めた。

宇宙生成の初期に形成された星々は、途方もない質量だったので、爆発するや、中性子星もブラックホールも残すことなく、完全に飛散してしまったと考えられている。その時に宇宙空間にばらまかれた物質が、今日の宇宙を形作る原料となった。宇宙の歴史上、ビッグバンにつぐ重要なできごとだったのである。

今回の超新星における爆発も、126億年前の爆発に匹敵する異常な規模のものだったのではないか。博士たちはその可能性を探るのであるが、何故100億年以上も隔てた後にこんな爆発がおこったのか、今のところ検討もつかないという。

ただ、これほどの規模の爆発が起こるためには、そのもととなった恒星に、想像を絶するような兆大な質量があったことを想定せざるを得ない。何らかの理由で、そのような質量を持つ星が、宇宙生成のはるか後まで残っていたのかもしれない。

気にかかるのは、周囲の宇宙空間や地球に対する影響だ。通常、超新星爆発が発生すると強烈なガンマ線が放射され、50光年以内の距離にある星の生命体はことごとく死滅するか壊滅的な影響を受けるといわれる。また、超新星の10倍を超えるような規模の、いわゆる極超新星爆発にあっては、500光年以上の距離にまで壊滅的な影響を及ぼす。今回の爆発は、もしかしたら数百倍にも達する巨大なものなので、その影響の範囲は数万光年になるかもしれない。

今回の爆発は、地球からは2億4000万光年隔たったところで起きた。その規模がいくら想像を絶するといっても、地球に影響が及ぶことはあるまいと、考えて良いだろう。

ところで、2億4000年前といえば、地球上では恐竜が闊歩していた時代だ。その時に宇宙の彼方で起こったことが、今地球上の我々に届いたわけだ。思えば気の遠くなるような話である。 

(参考)
Supernova may offer new view of early universe By Peter Spotts : CSMonitor


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    このページは、が2007年5月19日 16:39に書いたブログ記事です。

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