マウンテンゴリラの受難

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先日、コンゴ民主共和国の東部にあるヴィルンガ国立公園内において、マウンテンゴリラの生後2ヶ月ほどの子どもが、死んだ母親にしがみついているところを、公園のレンジャーが発見した。

子どものゴリラは保護されて、公園事務所内で人口乳を与えられている。通常ゴリラの子どもは生後3年間母親の授乳によって成長する。この子ゴリラが人工栄養で成長できるかどうか、見込みはフィフティ・フィフティのようだ。

母親のゴリラは、後頭部を至近距離から撃たれていた。その様子が処刑を思わせるようだったという。誰が何の目的でこんなことをしたのか、今のところは謎のようだ。

国立公園では、絶滅が心配されるマウンテンゴリラの保護にやっきになっている。密猟者によって殺される事件は後を絶たず、頭を悩ませていた矢先の事件だ。死体を持ち去らずに放置しているところをみると、どうやら今回のケースは密漁が目的ではないらしい。

ゴリラは大別してニシゴリラとヒガシゴリラに別れ、ヒガシゴリラはさらに、低地にすむものとマウンテンゴリラに別れている。マウンテンゴリラの個体数はいまや700まで減り、絶滅寸前である。ヴィルンガ国立公園には、野生のマウンテンゴリラの半数が生息し、最後の大コロニーとなっている。公園には無償で働く数多くのレンジャーが、密猟者に目を光らせているという。

マウンテンゴリラはかつて、毛皮や手の皮を目的に大量に殺された。また現地のアフリカ人はゴリラを食用に捕獲する習慣がある。これに加え、数年前にエボラ出血熱がマウンテンゴリラの間に流行し、全個体数の3分の2が死んだ。

コンゴ民主共和国といえば、数年前まで泥沼の内戦が続いていたところだ。この内戦を通じて400万人が死んだといわれる。2003年には停戦が成立したということになっているそうだが、秩序が完全に取り戻されたわけではなく、いまだに部族の民兵が活動して小規模な戦闘があちこちで起きている。

民兵たちはしばしば国立公園内に出没し、マウンテンゴリラを捕獲していたらしい。また民兵とは無関係な密猟者もかなりの数に上るらしい。この10年の間に、それら密猟者たちによって、実に150人ものレンジャーが殺されたという。

先月には、マイマイという民兵組織が国立公園のパトロール・ポストを襲い、レンジャー1名を殺害、3名を負傷させた。民兵は公園側が報復をするなら、マウンテンゴリラを皆殺しにすると脅迫しているそうだ。

今回のケースが彼らの動きと関係あるのか、今のところはわかっていない。

野生動物がのびのびと生きていくためには、生息環境はじめ様々な条件が必要だ。少なくとも、人間による殺害行為があってはならない。人間の政治的な抗争に巻き込まれて、その人質にとられるなど、情けない限りの話である。

(参考)Congo rangers treat rare gorilla orphaned in shooting KINSHASA (Reuters)


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    このページは、が2007年6月17日 12:30に書いたブログ記事です。

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