黄金時代:ランボーの錯乱

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「黄金時代」は、アルチュール・ランボーの韻文としては最後のもので、彼の一つの到達点をしめしている。だが、その内容は錯乱に満ちており、なまじな解釈を拒むものをもっている。

文字通りに読めば、精神錯乱者のうわごととしか、響かないだろう。

この詩は、1872年6月、パリのヴィクトル・クーザン街のある、こぎれいな部屋で書かれた。

7月には、ランボーはヴェルレーヌと手と手を取り合い、放浪の旅に出る。


黄金時代

  声のひとつが
  天使のような音色で
  この俺のことではあるが
  手厳しく説経する

  あちこちから湧き出てくる
  それら幾多の疑問は
  つまるところは酩酊と
  空騒ぎをもたらすだけ

  このからくりときては
  かくも愉快で簡単だ
  波と花のようにはかないが
  俺にとっては身内でもある

  声は歌う O
  かくも愉快で簡単だ
  裸の目にも見えたので
  俺も声と一緒に歌った

  このからくりときては
  かくも愉快で簡単だ
  波と花のようにはかないが
  俺にとっては身内でもある

  すると声の一つが
  何と天使のような声だろう
  この俺のことではあるが
  手厳しく説経する

  とにかく歌いなさい
  吐息のなかに溶け込んで
  ドイツ風に調子よく
  熱烈に声高く

  この世の邪悪に
  何も驚くことはない
  不運など火にくべて
  生き続けなさい

  愉快な城よ
  お前の命は透明だ
  どんな時代に俺たちは属しているのだ
  天性の王よ
  我らが兄弟よ

  俺も又歌ってみよう
  声の姉妹たちよ
  純真爛漫な声たちよ
  つつましやかな栄光で
  俺を包み込んでおくれ


(フランス語原文)
Âge d'Or : Arthur Rimbaud Juin 1872

  Quelqu'une des voix
  Toujours angélique
  -Il s'agit de moi, -
  Vertement s'explique :

  Ces mille questions
  Qui se ramifient
  N'amènent, au fond,
  Qu'ivresse et folie ;

  Reconnais ce tour
  Si gai, si facile :
  Ce n'est qu'onde, flore,
  Et c'est ta famille !

  Puis elle chante. O
  Si gai, si facile,
  Et visible à l'œil nu...
  - Je chante avec elle, -

  Reconnais ce tour
  Si gai, si facile,
  Ce n'est qu'onde, flore,
  Et c'est ta famille !... etc...

  Et puis une voix
  - Est-elle angélique ! -
  Il s'agit de moi,
  Vertement s'explique ;

  Et chante à l'instant
  En soeur des haleines :
  D'un ton Allemand,
  Mais ardente et pleine :

  Le monde est vicieux ;
  Si cela t'étonne !
  Vis et laisse au feu
  L'obscure infortune.

  O ! joli château !
  Que ta vie est claire !
  De quel Age es-tu,
  Nature princière
  De notre grand frère ! etc...,

  Je chante aussi, moi :
  Multiples sœurs ! voix
  Pas du tout publiques !
  Environnez-moi
  De gloire pudique... etc...,


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