迷子になった女の子(ブレイク詩集:無垢の歌)

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ウィリアム・ブレイクの詩集「無垢の歌」 Songs of Innocence から「迷子になった女の子」の歌 The Little Girl Lost (壺齋散人訳)


迷子になった女の子

  未来へ向かって
  私は予見の夢を見る
  大地が眠りから覚め
  (死の如き深い眠りから覚め)

  立ち上がって生気に満ち
  創造主に訴えかけると
  荒れ果てた砂漠はよみがえり
  麗しい楽園に変わるだろう

  南の国にあっては
  夏の盛りは衰えを知らぬ
  その楽園に一人の少女
  愛らしいリカが横たわっている

  七つの夏が過ぎていったと
  愛らしいリカはいう
  野鳥の声を耳にしながら
  果てもなくさまよううちに

  “甘い眠りを眠りたい
  この木の下に横たわって
  父さん 母さん 泣いて頂戴
  あなたのリカが眠るところで“

  “砂漠の中に一人ぼっち
  あなたたちの小さな子ども
  リカは安心して眠れないの
  母さんが泣いてくれなければ“

  “母さんの心が痛んだら
  リカはすぐ起き上がるでしょう
  母さんが寝たままだったら
  リカは決して泣かないでしょう“

  “夜はとてもこわいけれど
  砂漠は明るく照らされている
  私がこうして寝ているあいだに
  月が昇って照らすから“

  リカは眠りながら横たわる
  すると恐ろしい肉食獣が
  深い谷間から這い上がってきて
  眠れる少女を覗き込む

  王様らしいライオンが
  少女の顔をのぞきまわると
  少女の周りを飛び跳ねる
  神聖な大地の上を

  ヒョウやトラたちもやってきて
  少女の周りを飛び跳ねる
  すると年老いたライオンが
  黄金のタテガミを少女に垂れ

  少女の胸をなめてやったり
  少女の首をなめたりする
  燃えるようなライオンの目には
  ルビーのような涙がこぼれた

  女王様のライオンは
  少女の小さな着物を脱がし
  自分たちが住む洞窟へと
  眠れる少女を運んでいった

この詩は、砂漠の中で両親から見捨てられ、一人ぼっちで七夏もさまよい歩いた少女の眠りを、ファンタスティックに描いている。

子どもが親から捨てられることの恐怖と悲しみがテーマの一つである。ブレイクには、似たようなテーマの詩が他にもいくつか見られる。捨てられることへの恐怖は子どもの中にある深層心理ともいうべきものだ。それは英国の児童文学にとって、つきせぬイマジネーションの泉であり続けた。

少女の悲しみは動物たちに受け継がれ、後半では、ライオンやヒョウやトラたちが、少女の夢に現れる。センダックの絵本にあるような世界を思わせる。

The Little Girl Lost William Blake

  In futurity
  I prophetic see
  That the earth from sleep
  (Grave the sentence deep)

  Shall arise and seek
  For her maker meek;
  And the desart wild
  Become a garden mild.

  In the southern clime,
  Where the summer's prime
  Never fades away,
  Lovely Lyca lay.

  Seven summers old
  Lovely Lyca told;
  She had wander'd long
  Hearing wild birds' song.

  "Sweet sleep. come to me
  Underneath this tree.
  Do father, mother. weep!
  Where can Lyca sleep!

  "Lost in desart wild
  Is your little child.
  How can Lyca sleep
  If her mother weep!

  "If her heart does ake
  Then let Lyca wake;
  If my mother sleep,
  Lyca shall not weep.

  "Frowning, frowning night,
  O'er this desart bright,
  Let thy moon arise
  While I close my eyes."

  Sleeping Lyca lay
  While the beasts of prey,
  Come from caverns deep,
  View'd the maid asleep.

  The kingly lion stood,
  And the virgin view'd,
  Then he gambol'd round
  O'er the hallow'd ground.

  Leopards, tygers, play
  Round her as she lay,
  While the lion old
  Bow'd his mane of gold

  And her bosom lick.
  And upon her neck
  From his eyes of flame
  Ruby tears there came;

  While the lioness
  Loos'd her slender dress.
  And naked they convey'd
  To caves the sleeping maid.


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