ウィリアム・ブレイクの詩集「経験の歌」Songs of Experience から「病気のバラ」 The Sick Rose(壺齋散人訳)
病気のバラ
病気のバラよ
見えない虫が夜にまぎれて
嵐のような羽音をたてつつ
お前のところに飛んでくるや
緋色に輝き喜びに満ちた
お前の花びらをベッドにしたのだ
虫の暗くてひそかな愛が
お前の命を滅ぼしたのだ
「病気のバラ」と題するこの詩は、バラに重ねて乙女の不幸を歌っているとも読み取れる。バラがその美しさのゆえに、虫の暗くてひそかな愛によって滅ぼされるように、乙女もその美しさゆえに滅びることがある。
だが解釈はあくまでも解釈に過ぎない。この詩に歌われているのはあくまでもバラと、それにひそかに忍び寄る見えざる虫だ。始めに worm とあるので、毛虫の類を連想していると、次には fly と出てくるので、いつの間にか羽虫にイメージがすりかわっている。
The Sick Rose William Blake
O Rose thou art sick.
The invisible worm,
That flies in the night
In the howling storm:
Has found out thy bed
Of crimson joy:
And his dark secret love
Does thy life destroy.
関連リンク: 英詩のリズム>ブレイク詩集「経験の歌」
コメントする