交感 Correspondances(ボードレール:悪の華)

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シャルル・ボードレールの詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal から「交感」 Correspondances (壺齋散人訳)


交感

  自然は荘厳な寺院のようだ
  列柱は厳かな言葉をおりなし
  人は柱の間を静かに歩む 
  象徴の森をゆくが如くに

  遠くから響き来るこだまのように
  暗然として深い調和のなかに
  夜の闇 昼の光のように果てしなく
  五感のすべてが反響する

  嬰児の肉のような鮮烈な匂い
  オーボエのようにやさしく 草原のように青く
  甘酸っぱく 豊かに勝ち誇った匂い

  無限へと広がりゆく力をもって
  こはく 麝香 安息香の匂いが
  知性と感性の共感を奏でる

「交感」 Correspondances は、ボードレールの詩の中でも、もっとも議論を呼んだものであって、多くの批評家によって、夥しい言及がなされてきた。それらにほぼ共通するのは、この詩が、ボードレールの象徴主義的考えを、もっとも良く示していると見る点である。

Correspondances (万物照応とも訳される)は、自然と人間との共感であり、視覚や臭覚など人間の感覚器官相互の共感であり、また理性と感性との共感でもある。人はこの何重にもわたってめぐらされた共感の森の中で、自然の一部としての生を生きる。

この詩はボードレールの比較的若い頃に書かれていたとする説もあるが、1855年に「両世界評論」に発表した18篇の中には含まれていない。おそらく、初版の刊行に併せて、新たに書いたものだと思われる。


Correspondances — Charles Baudelaire

  La Nature est un temple où de vivants piliers
  Laissent parfois sortir de confuses paroles;
  L'homme y passe à travers des forêts de symboles
  Qui l'observent avec des regards familiers.

  Comme de longs échos qui de loin se confondent
  Dans une ténébreuse et profonde unité,
  Vaste comme la nuit et comme la clarté,
  Les parfums, les couleurs et les sons se répondent.

  II est des parfums frais comme des chairs d'enfants,
  Doux comme les hautbois, verts comme les prairies,
  — Et d'autres, corrompus, riches et triomphants,

  Ayant l'expansion des choses infinies,
  Comme l'ambre, le musc, le benjoin et l'encens,
  Qui chantent les transports de l'esprit et des sens.


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