陶淵明「飲酒二十首」より其十七を読む。
飮酒其十七
幽蘭生前庭 幽蘭 前庭に生じ
含薫待清風 薫を含んで清風を待つ
清風脱然至 清風 脱然として至らば
見別蕭艾中 蕭艾の中より別たれん
行行失故路 行き行きて故路を失するも
任道或能通 道に任せば或ひは能く通ぜん
覺悟當念還 覺悟して當に還るを念ふべし
鳥盡廢良弓 鳥盡くれば良弓廢てらる
かすかなランの花が前庭に開き、香りを含んで風の吹くのを待っている、のびやかに風が吹き渡ると、その香りがあたりに立ち込めて、雑草の中から目立つのだ
歩いているうちに道に迷っても、道に任せていれば再びもとの道に通じることもあるだろう、覚悟して正しい道に戻ろう、鳥がとりつくされれば、良弓も無用のものとなるから
ランの香りといい、道に迷うといい、良弓といい、この詩もかなり複雑な感情を歌いこんでいるようだ。
最後の節は、史記准陰侯列伝に「狡兎死して 良狗烹られ 高鳥盡きて 良弓藏さる」とあるのに基づく。恐らく晋から宋への交代のかなで、血なまぐさい闘争の演じられたことを暗示しているのではないか、そう解釈されている。
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