幽霊 Le Revenant:ボードレール

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ボードレール詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal から「幽霊」 Le Revenantを読む。(壺齋散人訳)


幽霊

  野獣の目をした天使のように
  余は汝の臥所に帰り来たり
  音もなく汝にすべり寄らん
  夜の闇にまぎれて

  月の如く冷たい接吻を
  愛するものよ 汝に捧げん
  墓場の周りをのた打ち回る
  蛇の如き愛撫を捧げん

  しかして青ざめた朝が来るや
  余は寝床にはおらぬであろう
  そこは夕べまで冷たいままだ

  他のものが礼節を以てなす如く
  余は恐怖を以て君臨せん
  汝の命と汝の若さに

この詩の中で「愛するものよ」とあるのは、原文では ma brune とあるので、ジャンヌを歌ったものだと思われる。

だが、この詩はジャンヌを歌った一連の詩とは離れたところにポツンとおかれている。こんなところから、ボードレールがこの詩に読み込んだものには、他のジャンヌものとは多少異なった趣が隠されているのだろうという憶測を呼んできた。

ボードレールには、月光のあやしい魅力を歌ったものが多い。この詩はジャンヌをイメージしながら、月光の怪しさと、その光を背景にした詩人の消え入るようなやるせない心を歌いたかったのではないか。


Le Revenant - Charles Baudelaire

  Comme les anges à l'oeil fauve,
  Je reviendrai dans ton alcôve
  Et vers toi glisserai sans bruit
  Avec les ombres de la nuit;

  Et je te donnerai, ma brune,
  Des baisers froids comme la lune
  Et des caresses de serpent
  Autour d'une fosse rampant.

  Quand viendra le matin livide,
  Tu trouveras ma place vide,
  Où jusqu'au soir il fera froid.

  Comme d'autres par la tendresse,
  Sur ta vie et sur ta jeunesse,
  Moi, je veux régner par l'effroi.


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