恐竜を絶滅させたもう一つの原因:昆虫類

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一億三千五百万年前から約七千万年間続いた白亜紀が、六千五百万年前に突然終了し、それとともに恐竜類も滅びたことに関しては、先稿「恐竜を絶滅させた巨大隕石」で述べたように、太陽系の中で発生した隕石がユカタン半島に激突した結果、地球環境が激変したことに主要な原因があることについて、ほぼ異論がないところであろう。

この説が決定的となる以前には、恐竜絶滅に関しての有力な説がいくつかあった。地球の環境を激変させたのは外部から来た隕石ではなく、今日のインドにあった火山が大爆発を起こしたからだろうとする説、また恐竜の絶滅は環境の激変からではなく、アレルギーや疫病といった疾病によるものだとする説などである。

その中でもっとも有力だったのは、寄生虫説である。白亜紀の末期、地球には何らかの原因によって寄生虫が大発生し、それのもたらす病原菌に対して恐竜たちが免疫を持っていなかったとするものである。

ポイナー夫妻 George and Roberta Poinar は、白亜紀末期における地層から大量の昆虫化石を発見したが、それらにはリーシュマニアやマラリアを発生させる微生物が含まれていた。恐竜たちはこれらの病原体に対して免疫を持たなかったために大量に死滅したのではないか、そう夫妻は考えている。

夫妻は無論、巨大隕石がもたらした主要な影響を否定してはいない。ただ長い期間にわたってこれらの病原菌に犯され、恐竜たちの体力が弱っていたところに、地球環境の激変が重なり、彼らの滅亡を早めたのではないか、そう推論するのである。

なお、白亜紀の後半は、非常に暑い時期だったと推測される。地球の表面温度は華氏100度(摂氏約37度)にも達していたらしい。そのことは、海中に住む有孔虫の酸素濃度分析結果から推測されている。

地球が熱せられると、海水中の酸素のバランスが崩れ、それが酸素を吸収して蓄積する有孔虫に顕著な影響を及ぼす。分析結果から得られたところによると、海水の温度上昇に敏感に反応して蒸発する酸素18というものが、この時期の有孔虫には少ないことがわかり、そこからこの時期が非常に暑い時期だったことが推測されたのである。

大気が暑いとマラリアなどの病原菌が大発生しやすい。恐竜自体も暑い条件の下で生きるのに適していたらしいが、その彼らより病原菌のほうが繁栄しやすくなったのであろう。

病原菌の影響だけで恐竜の絶滅は説明できないだろうが、地球環境の激変による恐竜の生命への脅威を加速させた可能性はある。

隕石衝突の結果、地球は暗黒の世界と化し、それに伴って急激に寒冷化したであろう。気温の激変もまた、恐竜の生命に深刻なダメージを与えたに違いない。


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