焼酎の味

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日本酒を蒸留すると焼酎が出来る。焼酎の製造技術は室町時代の末期には確立していたと思われるが、何故か日本の酒の文化の中では普及することがなかった。一昔前まで焼酎といえば安酒のイメージが付きまとっていたものだ。それが昭和50年代の後半から俄かに日本中で飲まれるようになった。「いいちこ」とか「二階堂」といった麦焼酎の銘柄が人気を集めたのがきっかけだったようだ。

平成の時代に入ると、焼酎の消費はいよいよ拡大し、その種類や品質も多様化した。これまで九州や沖縄などの零細な銘柄に過ぎなかったものが発掘され、全国に流通するようになった。いまでは蒸留酒としては、ウィスキーを抜き、もっとも好んで飲まれている。

一昔前まで焼酎の主流を占めていた甲類といわれるものは、米麹と蒸米を原料にしたアルコール度の低いもろみを連続蒸留して作られていた。アルコールの沸点が約78度と、水よりも低いことを利用して、蒸留を連続的に行うことによって高い濃度のアルコールを取り出すことができる。焼酎の原義は「焼いた酒」というのであるが、これは沸点の相違を利用して過熱することからきているのである。

こうして得られた高い濃度のアルコールに水を加え、25度ないし35度の濃度で売られていた。なにせエチル・アルコールを水で薄めた酒というべきなので、風味に乏しく、殆どアルコール本来の味に近い。清酒にもこのアルコール度の高い焼酎加えることが広く行われているが、それにはアルコール濃度を高めるだけではなく、飲み口を引き締める目的もある。日本の酒は清酒も含めて、世界中でもっともアルコール本来の味に近い酒だといわれる理由がここにある。

これに対して、現在の焼酎消費のブームを支えている乙類というものは、連続蒸留ではなく単式蒸留を用いることによって、原料の風味をなるべく生かそうとするものである。

アルコール発酵過程にも手を加えている。米麹と蒸米を用いた一次発酵に加え、二次発酵を行ってアルコール濃度を高めた上で蒸留する。こうすることで原料である米の風味が損なわれずに残るのである。

米焼酎の有名なブランドとしては、鹿児島県人吉地方の球磨焼酎が知られている。沖縄の泡盛も米焼酎の仲間である。ただし伝統的に南方のインディカ米を原料にしていた。蒸留した焼酎を甕の中で更に熟成させ、古酒に仕上げることで独特な風味をかもし出している。戦前の沖縄には数十年もの、中には100年以上の古酒もあったそうだ。単に年月をかけて寝かせるのではなく、毎年少しずつ新しい酒を注ぎ足す。これを仕次ぎという。

米以外の原料からも焼酎が作られる。主なものとしては、サツマイモ、小麦、そばがある。いづれも麹には米麹を用い、それに米以外の原料を組み合わせ、その澱粉に含まれる糖分を発酵させているが、中には米麹を用いず、芋や麦から麹を作り、単一の原料のみをもちいて純粋性を強調しているものもある。

バラエティに富んできた焼酎であるが、中でも芋焼酎の人気が高まっている。芋焼酎は麦やそばと比べてあくが強いという人もいるが、最近では甘みと風味のあるものが出回るようになって、人気に拍車をかけているようだ。

筆者自身は、鹿児島の伊佐錦という銘柄の焼酎を愛飲している。古酒でもなんでもないのだが、結構甘みがあって、口当たりがよいのである。


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