貧乏人の死 La Mort des pauvres :ボードレール

| コメント(0) | トラックバック(0)

ボードレール詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal から「貧乏人の死」 La Mort des pauvres を読む。(壺齋散人訳)


貧乏人の死

  我ら貧乏人にとって 死は唯一の慰め
  それは生きる目的 かけがえのない希望
  妙薬のように我らを高め うっとりとさせ
  我らの心を勇気付け 励ましてくれる

  死は嵐や雪や霜を乗り越え
  暗い地平線を照らす光明
  または書物に記載された名高き宿
  我らはそこで 安息できる

  死は天使 大きな手に
  眠りと夢の贈り物を抱え
  貧しいものに寝床をくれる

  死は神の栄光 神秘の穀倉
  死は貧しいもののなつかしい故郷
  死は天国に向かって開かれた門

ボードレールにとって死とは、この世に生きることの終わりではなく、あの世で生きることの始まりであった。「死」と題した一連の作品は、そのようなボードレールの思想を体現したものばかりである。愛し合うものたちにとっては、死は「見も知らぬ美しい風土」への扉を開くものであり、芸術家たちにとっては、そそり立つ美の神殿へと導いてくれるものであった。

そのような死がもっとも慈悲深く現れるのは、貧乏人たちにとってである。彼らは現生になんらの慰藉をも期待することがなかった。もしあの世というものがないとしたら、彼らの悲惨さがどのようにして、償われるというのか。

貧乏人たちにとって、死は神からの唯一つの贈り物なのであり、天国に向かった開かれた門なのである。


La Mort des pauvres - Charles Baudelaire

  C'est la Mort qui console, hélas! et qui fait vivre;
  C'est le but de la vie, et c'est le seul espoir
  Qui, comme un élixir, nous monte et nous enivre,
  Et nous donne le coeur de marcher jusqu'au soir;

  À travers la tempête, et la neige, et le givre,
  C'est la clarté vibrante à notre horizon noir
  C'est l'auberge fameuse inscrite sur le livre,
  Où l'on pourra manger, et dormir, et s'asseoir;

  C'est un Ange qui tient dans ses doigts magnétiques
  Le sommeil et le don des rêves extatiques,
  Et qui refait le lit des gens pauvres et nus;

  C'est la gloire des Dieux, c'est le grenier mystique,
  C'est la bourse du pauvre et sa patrie antique,
  C'est le portique ouvert sur les Cieux inconnus!


関連リンク: 詩人の魂ボードレール >>悪の華

  • ポール・ヴェルレーヌ:生涯と作品

  • アルチュール・ランボー:生涯と作品

  • フランソア・ヴィヨン:生涯と作品

  • エディット・ピアフのシャンソン
  • ボードレール Charles Baudelaire





  • ≪ 破滅 La Destruction :ボードレール | ボードレール | 旅 Le Voyage :ボードレール ≫

    トラックバック(0)

    トラックバックURL: http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/660

    コメントする



    アーカイブ

    Powered by Movable Type 4.24-ja

    本日
    昨日

    この記事について

    このページは、が2008年3月19日 19:22に書いたブログ記事です。

    ひとつ前のブログ記事は「ツアーコンダクターたちの悲哀」です。

    次のブログ記事は「旅 Le Voyage :ボードレール」です。

    最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。