苦悩 Angoisse :マラルメ

| コメント(0) | トラックバック(0)

ステファヌ・マラルメの詩集「苦悩」Angoisse を読む。(壺齋散人訳)

  人間の罪に満ちた獣よ 今宵はお前の肉体を
  征服するためにきたのではない
  またお前の不純な髪を我が接吻で倦怠に包み
  悲しい嵐をかき回そうとも思わぬ

  余がお前の寝床に望むのは 夢も見ない重い眠りだ
  夢は悔恨を知らぬカーテンの陰に漂わせておこう
  お前が黒い虚偽の後で味わう あの眠りを余は望む
  死者たちよりもよく虚無を知っているお前よ

  悪徳が余の生まれながらの高貴さを蝕み
  余にお前と同じような不妊の徴を刻む
  だがお前の石でできた胸には

  どんな凶悪な歯も傷つけえぬ心が宿っているのに
  余は寝ている間に死んでしまうことを恐れ
  青ざめ 狼狽して 布団をかぶったまま逃げ出すのだ

「苦悩」と題するこの詩を、マラルメは1864年のトゥールノン時代に書いたとされる。最初は「ある売春婦に」と題されていた。

この売春婦が誰を指しているのかについては、よくわかっていない。マラルメはトゥールノンの街も、そこでの生活にも嫌悪感を催していたが、そうした嫌悪感が売春婦の中に投影されたのだろうか。売春婦の肉体は、いつしか石の彫像のイメージにすりかわっている。


Angoisse - Stéphane Mallarmé

  Je ne viens pas ce soir vaincre ton corps, ô bête
  En qui vont les péchés d’un peuple, ni creuser
  Dans tes cheveux impurs une triste tempête
  Sous l’incurable ennui que verse mon baiser :

  Je demande à ton lit le lourd sommeil sans songes
  Planant sous les rideaux inconnus du remords,
  Et que tu peux goûter après tes noirs mensonges,
  Toi qui sur le néant en sais plus que les morts :

  Car le Vice, rongeant ma native noblesse,
  M’a comme toi marqué de sa stérilité,
  Mais tandis que ton sein de pierre est habité

  Par un cœur que la dent d’aucun crime ne blesse,
  Je fuis, pâle, défait, hanté par mon linceul,
  Ayant peur de mourir lorsque je couche seul.


関連リンク: 詩人の魂ステファヌ・マラルメ Stéphane Mallarmé :生涯と作品

  • ボードレール Charles Baudelaire

  • ポール・ヴェルレーヌ

  • アルチュール・ランボー

  • レミ・ド・グールモン

  • フランソア・ヴィヨン

  • エディット・ピアフのシャンソン
  • フランス文学と詩の世界




  • ≪ 空しい願い Placet futile :マラルメ | 詩人の魂 | 鐘を撞く男 Le Sonneur :マラルメ ≫

    トラックバック(0)

    トラックバックURL: http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/729

    コメントする



    アーカイブ

    Powered by Movable Type 4.24-ja

    本日
    昨日

    この記事について

    このページは、が2008年4月24日 19:32に書いたブログ記事です。

    ひとつ前のブログ記事は「空しい願い Placet futile :マラルメ」です。

    次のブログ記事は「トマス・アクィナスとスコラ哲学」です。

    最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。