古詩十九首其九「庭中に奇樹有り」
庭中有奇樹 庭中に奇樹有り
綠葉發華滋 綠葉 華滋を發く
攀條折其榮 條を攀じて其の榮を折り
將以遺所思 將に以て思ふ所に遺らんとす
馨香盈懷袖 馨香 懷袖に盈つれども
路遠莫致之 路遠くして之を致すなし
此物何足貴 此の物何ぞ貴ぶに足らんや
但感別經時 但 別れて時を經たるに感ずるのみ
庭にめずらしい木が生えていて、緑の葉の間につややかな花が咲きました、枝を引き寄せ、その花を折り取り、思う人に贈りたいと思います
花の香は懐や袖にただよいますが、道が遠すぎてあの人に贈るすべがありません、でも花のことは大したことではないのです、別れて久しいその思いを届けたいのです
女が遠く別れている男を思いやった歌である。つややかな花を贈りたいが、間を隔てている道が遠すぎて贈るすべがない、だが私が本当に送り届けたいのは、花よりも自分の思いなのだと、女の男への切ない思いがさりげなく語られている。
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