迢迢たる牽牛星:牽牛織女七夕の詩(古詩十九首其十)

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古詩十九首から其十「迢迢たる牽牛星」を読む。

  迢迢牽牛星  迢迢たる牽牛星
  皎皎河漢女  皎皎たる河漢の女
  纖纖擢素手  纖纖として素手を擢(あ)げ
  劄劄弄機杼  劄劄として機杼を弄す
  終日不成章  終日 章を成さず
  泣涕零如雨  泣涕 零ちて雨の如し
  河漢清且淺  河漢 清く且つ淺し
  相去複幾許  相去ること複た幾許ぞ
  盈盈一水間  盈盈たる一水の間
  脈脈不得語  脈脈として語るを得ず

天の川を隔てて遥かな彦星よ、また白く明るい織姫星よ、か細く白い手をぬきんでて、サツサツとして機を織る、一日中織っても布が出来上がらない、織姫の目からは涙が雨のように流れ落ちる(迢迢は、はるかなさま、皎皎は、白く明るいさま、河漢は天の川、劄劄は機をおるサツサツという音、)

天の川は清くてしかも浅い、互いに隔たる距離はそう遠くはないのに、水の流れる川を挟んで、見詰め合ったまま語ることもできないのだ(盈盈は、水が満ちているさま、脈脈は、じっと見つめ合うこと)


牽牛織女の伝説は、すでに詩経の中でも歌われているから(小雅大東)、中国の歴史にあって古い起源を有している。伝説の原型は、鷲座(牽牛星)と琴座(織女)という二つの星が、向かい合ったままいつまでも結ばれぬ悲しみを詩的なイメージに高めたものであった。

それが魏晋のころになると、二人の間に流れる天の川にカササギが年に一度橋をかけ、そこを二人がわたって結ばれるという話に転化した。それが七夕の節句と結びついて、今日のような七夕伝説へと発展していったのである。

この詩では、牽牛織女は天の川を挟んだまま結ばれることがない。おそらく、古代の伝説のかたちがまだ残っていた時代に歌われただろうことを伺わせる。

迢迢、皎皎、纖纖、劄劄、盈盈、脈脈と重音を駆使することで、詩にリズムをもたらしているが、これも詩経以来の古代の詩の伝統を踏まえたものといえる。

この詩は、古詩十九首のなかで最も人工に膾炙したものであり、後世に及ぼした影響にも大なるものがある。


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