アポロへの讃歌 Hymn To Apollo :キーツ

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ジョン・キーツの詩「アポロへの讃歌」 Hymn To Apollo を読む。(壺齋散人訳)

  黄金の弓を持つ神
  黄金の竪琴を奏でる神
  黄金の髪をなびかす神
  黄金の火を放つ神
  季節を運ぶ
  乗り物の御者
  神よあなたの怒りが静まるのをみて
  ちっぽけなわたしがあなたの花冠を
  あなたの月桂冠 あなたの栄光
  あなたの光を戴いたとしたら
  そんなわたしは地を這う虫に見えるでしょうか?
  おお デルフォイに坐す偉大なアポロよ

  雷神は雷光を手に握る
  雷神は力んで顔をしかめる
  鷲は激情に駆られて
  タテガミを逆立てる
  すると雷は音をたてて
  地上へと落ちていき
  ごろごろとうなりながら静まった
  神よ あなたはちっぽけな虫を憐れみ給うたか?
  やわらかな笛の音を伴奏に
  雷鳴を静まらせてくださったか
  この哀れな虫を殺さないようにと?
  おお デルフォイに坐す偉大なアポロよ!

  スバルの星々が現れ
  静かな空に瞬く
  地上には植物が芽生え
  夏の収穫に備え始めた
  傍らの海は昔のままに
  悠然と波打ちつづける
  そんなときに誰だろう?
  あなたの花冠を額に巻き
  誇らしげな顔をして
  高らかと祝福の歌を歌い 名誉に包まれ 
  あなたに会釈するのはわたしなのだ
  おお デルフォイに坐す偉大なアポロよ!

キーツにとって、アポロはギリシャの遠い神ではなく、自分の生き方を照らしてくれる身近な神であったようだ。そのアポロを、前後二つの「ハイペリオン」の中で、力を込めて歌っている。

「アポロへの讃歌」と題したこの詩は、「ハイペリオン」執筆の副産物かもしれない。アポロは、弓を持つ神であり、竪琴を奏でる神であり、またゼウスのように雷を操る神としても描かれている。

そのアポロと比較して、人間は虫けらのようにちっぽけなものだが、アポロの光明を受けて偉大な存在になることも出来る。この詩はそんな人間について、前半では虫けらとして登場させ、後半では名誉に包まれアポロに会釈するものとして描いている。


Hymn To Apollo

  GOD of the golden bow,
  And of the golden lyre,
  And of the golden hair,
  And of the golden fire,
  Charioteer
  Of the patient year,
  Where---where slept thine ire,
  When like a blank idiot I put on thy wreath,
  Thy laurel, thy glory,
  The light of thy story,
  Or was I a worm---too low crawling for death?
  O Delphic Apollo!

  The Thunderer grasp'd and grasp'd,
  The Thunderer frown'd and frown'd;
  The eagle's feathery mane
  For wrath became stiffen'd---the sound
  Of breeding thunder
  Went drowsily under,
  Muttering to be unbound.
  O why didst thou pity, and beg for a worm?
  Why touch thy soft lute
  Till the thunder was mute,
  Why was I not crush'd---such a pitiful germ?
  O Delphic Apollo!

  The Pleiades were up,
  Watching the silent air;
  The seeds and roots in Earth
  Were swelling for summer fare;
  The Ocean, its neighbour,
  Was at his old labour,
  When, who---who did dare
  To tie for a moment, thy plant round his brow,
  And grin and look proudly,
  And blaspheme so loudly,
  And live for that honour, to stoop to thee now?
  O Delphic Apollo!


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