ヴェルレーヌの墓 Tombeau de Verlaine :マラルメ

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ステファヌ・マラルメの詩「ヴェルレーヌの墓」Tombeau (de Verlaine) を読む。(壺齋散人訳)

  黒い墓石が吹きまくる北風に怒る
  それでも存在することをやめず 背教の点でなら
  自分は人間の悪意に似ていると感じて
  死者の遺影に冥福を祈るのだ

  墓石の形なき弔意は 鳩の鳴き声とともに
  切れ切れの雲となって舞い上り
  明け方の大きな星にうちあたり打ち砕き
  銀のきらめきが群集の上に降り注ぐだろう

  誰がヴェルレーヌを探しているのだ
  孤独な跳躍者 受け入れられることのなかったヴァガボンド
  ヴェルレーヌは今や草葉の陰にいるのだ

  ヴェルレーヌは安らかな調和の中で 飲むための唇もないのに 
  自分の息がそれを乾かしてしまわぬよう気をつけながら
  死の流れを受けとめようとしているのだ

この詩はヴェルレーヌの一周忌にあたって、雑誌に掲載された。

マラルメはヴェルレーヌには恩義のような特別な感情をもっていたようだ。社会的には無名に近かったマラルメを世間に紹介したのはヴェルレーヌだった。1884年に発表した「呪われた詩人たち」のなかで、アルチュール・ランボー、トリスタン・コルビエールとともにマラルメを紹介したことによって、マラルメは俄然注目されるようになったのである。もしヴェルレーヌが紹介しなかったなら、マラルメは文学史に名を残さなかったかもしれない。

詩の中には、そうした事情を踏まえてか、ヴェルレーヌへの暖かい感情が表されている。


Tombeau (de Verlaine) - Stéphane Mallarmé

  Le noir roc courroucé que la bise le roule
  Ne s’arrêtera ni sous de pieuses mains
  Tâtant sa ressemblance avec les maux humains
  Comme pour en bénir quelque funeste moule.

  Ici presque toujours si le ramier roucoule
  Cet immatériel deuil opprime de maints
  Nubiles plis l’astre mûri des lendemains
  Dont un scintillement argentera la foule.

  Qui cherche, parcourant le solitaire bond
  Tantôt extérieur de notre vagabond -
  Verlaine ? Il est caché parmi l’herbe, Verlaine

  À ne surprendre que naïvement d’accord
  La lèvre sans y boire ou tarir son haleine
  Un peu profond ruisseau calomnié la mort.


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