世界で最も影響力を行使する百人、今年のトップはダライ・ラマ

| コメント(0) | トラックバック(0)

米誌タイムは電子版で、世界中で今年最も影響力を行使するであろうと予想される人物100人について特集記事を発表した。同誌が最近毎年特集しているもので、今回で5回目になる。それによると、今年の影響度ナンバーワンはチベットの精神的・政治的指導者ダライ・ラマだということだ。

今年は北京オリンピックの年である。その北京の共産党政権にとって、ダライ・ラマを象徴とするチベット問題は、長い間、政権運営のアキレス腱となってきた。北京政権は1950年代にチベットに侵攻して属国化したのであるが、それ以来、インドに亡命したダライ・ラマを無視して、チベット民族の自治権を認めようとはしてこなかった。これに対して最近、チベット人民による自主独立の運動が高まってきたのである。

ダライ・ラマ自身は暴力によって独立を達成することを訴えず、あくまでも話し合いによってチベットの自治を勝ち取ろうとしてきた。こうした態度には賛否両論があるようだが、何しろダライ・ラマはチベットのあらゆる面における指導者である。その彼が言うことなすことは、北京オリンピックを控えたこの時期にには、チベット問題の行方にとって甚大な影響力を発揮するのである。

そうした訳で、ダライ・ラマは今年当分の間、もっとも世界に影響を及ぼす存在であり続けると予想される。北京政府による扱い方次第では、オリンピックの開催が危ぶまれるほどのインパクトを与えているのだ。

二位はロシアのプーチンだ。プーチンは世界中の憶測をあざ笑うように、独裁者として生き延びる道を選ばなかった代わりに、メドヴェーディエフという傀儡を大統領に据え、自らは首相として生き延びる道を選んだ。彼がどんな動機からこうした生きかたを選んだのかについては、さまざまな憶測が流れているが、いづれにせよ、今後のロシアに強い影響力を行使し続けるであろうことは明らかだ。しかしてロシアは今や、世界の動向に決定的なインパクトを及ぼす国になりつつある。その舵取り役であるプーチンがどのような行動をとるのか、世界中が注目するということだろう。

第三位はオバマ・バラク、第四位はヒラリー・クリントン、第五位はマッケインと、現在アメリカ大統領選挙を戦う人物が占めている。アメリカは何と言っても世界の動向を牽引している国であり、その大統領が誰になるのかは世界中の関心事であるから、彼らが上位を占めるのは自然なことともいえる。

だが政治家だけが影響力ある人物であるわけではない。タイムはこの後、さまざまな分野でリーダーシップを発揮する人びとを次々に紹介している。その中にはミア・ファーロウやアンドレ・アガシなど往年のスターも入っている。彼らは年老いてなお、名を売ることに努力しているのである。

日本人の中からは、京都大学の山中教授とポップアーチストの村上隆が入っている。

山中教授は、万能細胞の研究で俄然世界の注目を浴びた人だ。この成果が実用化されれば、人間に限りない恩恵をもたらす。もしかしたら、人間にとって永遠の願望であった不老を、ある程度まで実現できるかもしれないのだ。

それはともかく、山中教授の業績は、これまでも世界中の遺伝子学者の導きの糸であったし、これから先も世界をリードしていくだろうと、衆目によって認められている。

一方村上隆については、筆者はこれまで知るところがなかった。いまや世界中から注目されるアーチストということらしい。ポップアートといっても、さまざまな行き方があるらしいが、村上の場合には、秋葉原が世界に向かって発信している、あの妙な漫画文化とも深い関わりがあるらしい。

100人のうちで二人というのは、多いのか少ないのかわからぬが、ともあれ日本人にも世界のあり方に影響力を及ぼすだけの力量をもったものがいるということは、心強いことというべきだろう。


関連リンク: 世界情勢を読む

  • チベットの暴動:中国政府が恐れるダライ・ラマの影

  • 皮膚細胞から万能細胞を作る:再生医療の可能性

  • 今年のMan of the Yearはプーチン:米誌タイム

  • クレムリン株式会社:プーチンのロシア
  • 台頭する中国:脆弱なスーパーパワー

  • 政治勢力化するアジアの仏教

  • 台北小紀行




  • ≪ 中国の若者気質:保守主義と熱狂的愛国心 | 世界情勢を読む | 双面の女神インドに誕生す ≫

    トラックバック(0)

    トラックバックURL: http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/746

    コメントする



    アーカイブ

    Powered by Movable Type 4.24-ja

    本日
    昨日

    この記事について

    このページは、が2008年5月 4日 14:13に書いたブログ記事です。

    ひとつ前のブログ記事は「水仙:水彩で描く折々の花」です。

    次のブログ記事は「テンジクネズミ A little guinea-pig :マザーグース」です。

    最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。