蜜蜂 L'Abeille :ポール・ヴァレリー

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蜜蜂 L'Abeille (ポール・ヴァレリーの詩集「魅惑」から:壺齋散人訳)

  お前の針が 蜜蜂よ
  どんなに繊細で どんなに致命的でも
  わたしはただ 薄紗のような眠りで
  お前の一撃を受け止めるだけだろう

  わたしの胸のふくらみを刺しておくれ
  そこには愛がまどろんでいる
  刺されたあとには小さな斑点が
  丸い肉にそって浮き出てくるだろう

  すばやい一刺しでわたしを見舞っておくれ
  強烈だけれど限りある痛みのほうが
  果てのない鈍痛よりも耐えやすいから

  わたしの感覚が
  小さな金色の傷に警戒し
  愛が死んだり眠り込んだりしないように!

ヴァレリーは「若きパルク」の創作を通じてもう一度詩への情熱を書きたてた。「魅惑」 Charmes に収められた諸篇は、その後期の作品群である。前期の作品と比較して、密度が濃くなり、言葉の音楽性も滑らかなものになっている。

「蜜蜂」と題したこの詩は、女の肌の柔らかさをモチーフにしたものだ。かすかなエロティシズムがそこには流れている。


L'Abeille - Paul Valéry

  Quelle, et si fine, et si mortelle,
  Que soit ta pointe, blonde abeille,
  Je n’ai, sur ma tendre corbeille,
  Jeté qu’un songe de dentelle.

  Pique du sein la gourde belle,
  Sur qui l’Amour meurt ou sommeille,
  Qu’un peu de moi-même vermeille,
  Vienne à la chair ronde et rebelle !

  J’ai grand besoin d’un prompt tourment :
  Un mal vif et bien terminé
  Vaut mieux qu’un supplice dormant !

  Soit donc mon sens illuminé
  Par cette infime alerte d’or
  Sans qui l’Amour meurt ou s’endort !


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