消えうせたワイン Le vin perdu :ポール・ヴァレリー

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ポール・ヴァレリーの詩「消えうせたワイン」Le vin perdu (壺齋散人訳)

  いつだったか またどこだったか
  わたしは大海の中に向けて
  虚無への捧げもののように
  少しだが貴重なワインを注いだ

  ワインよ 誰がお前を失いたかったか? 
  運命にそそのかされたか?
  あるいは心の不安を晴らすために
  血を夢見つつ お前を注いだのか?

  海はバラ色のしぶきを上げると
  またいつもどおりの透明さを
  何事もなかったように取り戻した

  ワインは消え失せ 波は酔う!
  わたしは苦々しい空の彼方に
  深遠な形象が踊るのを見た

大海の波に向かってワインを捧げることにどんな意味があるのか、フランス人ではない筆者にはつまびらかなことはわからない、神話的なイメージが背景にあるのだろうか

とまれワインは波を酔わせた、そして空の彼方に深遠な形象が踊りだす、ワインを捧げられたことに、海の精が反応しているのであろう


Le vin perdu - Paul Valéry

  J'ai, quelqe jour, dans l'Océan,
  (Mais je ne sais plus sous quels cieux),
  Jeté comme offrande au néant,
  Tout un peu de vin précieux...

  Qui voulut ta perte, " liqueur?
  J'obéis peut-être au divin?
  Peut-être au souci de mon coeur,
  Songeant au sang, versant le vin?

  Sa transparence accoutumée
  Aprés une rose fumée
  Reprit aussi pure la mer...

  Perdu ce vin, ivres les ondes!...
  J'ai vu bondir dans l'air amer
  Les figures les plus profondes...


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