詩経国風:邶風篇から「北風」を読む。(壺齋散人注)
北風其涼 北風其れ涼たり
雨雪其れ 雨雪其れ雱たり
惠而好我 惠にして我を好(よみ)するものと
攜手同行 手を攜へて同行せん
其虚其邪 其れ虚(ゆる)くせんや 其れ邪(ゆる)めんや
既亟只且 既に亟(すみやか)ならん
北風其喈 北風其れ喈たり
雨雪其霏 雨雪其れ霏たり
惠而好我 惠にして我を好するものと
攜手同歸 手を攜へて同じく歸せん
其虚其邪 其れ虚くせんや 其れ邪めんや
既亟只且 既に亟ならん
莫赤匪狐 赤きは狐に匪(あら)ざるは莫(な)く
莫黑匪鳥 黑きは鳥に匪ざるは莫し
惠而好我 惠にして我を好するものと
攜手同車 手を攜へて車を同じうせん
其虚其邪 其れ虚くせんや 其れ邪めんや
既亟只且 既に亟ならん
北風が吹き乱れ、雨雪が激しく降りすさんでいる、わたしの信頼する君と、手を携えて共にいこう、ゆっくりしていてはならぬ、遅れてはならぬ、さあ急いで去ろう
北風がひゅうひゅうと鳴り、雨雪が音を立てて降りすさんでいる、わたしの信頼する君と、手を携えて亡命しよう、ゆっくりしていてはならぬ、遅れてはならぬ、さあ急いで去ろう
赤いものを見たらそれはキツネだ、黒いものを見たらそれは烏だ、わたしの信頼する君と、手を携えて車に乗ろう、ゆっくりしていてはならぬ、遅れてはならぬ、さあ急いで去ろう
国が乱れて身に危険の迫ったと感じたものが、心を許す友人とともに他国に亡命しようとするところを歌ったものだ、春秋戦国時代の中国では、一夜にして戦乱に巻き込まれ、亡命を余儀なくされるものが多かったらしい
家族ではなく、友人とともに亡命するところが、この詩の眼目である
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