生命とダイアモンド

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地球上の生命がどのようにして生まれたか、詳しいことはほとんどわかっていない。ひとつの仮説として従来有力だったのは、宇宙の外の天体からもたらされたというものである。ある時期地球に衝突した天体に原始的な生命体が含まれていて、そこから地球の生命の歴史が始まったと推測するものだが、説明できないことを、神の業に帰するのと同様、都合がよすぎるという批判が強い。

生命体の基礎をなすのは、アミノ酸と呼ばれる蛋白質である。これが多数結合して多分子体を形成し、そこから生命体の基礎的なユニットが生じてくる。アミノ酸そのものは、ある程度の条件があれば、自然に形成されると推測されるが、これが多数結合して複雑な分子を構成するには、アミノ酸同士が結合しやすい特別の条件が必要である。

原始の地球上において、どのような条件が作用して、アミノ酸から生命体への飛躍が起こったのだろうか。

ドイツ・ウルム大学の研究者たちは、この条件をもたらしたものとして、ダイアモンドに注目した。原始的生命の登場に際して、ダイアモンドが産婆役の役割を果たしたと考えたのである。

ダイアモンドは炭素の結晶体であるが、その自然の生成過程に水素が作用すると、ダイアモンドの表面に水の水晶膜ができることが確認されている。この水の膜が生命の登場について一役買ったのではないかと、研究者たちは推測しているのだ。

原始の地球には水化ダイアモンドが多数存在したのではないか。このダイアモンドの表面の膜にアミノ酸が形成されると、それは多分子体の構成に有利な環境を与える。一旦生命の基本単位たる多分子体ができあがれば、そこから生命体への飛躍は比較的容易にもたらされる。

ウルム大学の研究者たちはこのように考え、それを裏付ける実験を積み重ねている。いづれ遠くない将来に、生命誕生の謎が明らかにされるかもしれない。

それにしても、ダイアモンドが生命の揺籠であったとは、何とも夢の多い話ではないか。


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