非正規雇用労働者に押し寄せる不況の波

| コメント(0) | トラックバック(0)

不況が国際的な広がりを見せる中で、日本経済も深刻な局面に入りつつあるようだ。輸出産業に依存する構造的な弱さが、不況の深刻化に拍車をかけていることもある。その影響が、派遣や短期雇用といったいわゆる非正規雇用の人々を直撃している。明日からの仕事はもうないと、突然解雇通告を受ける人々が急増しているのだ。

非正規雇用はいまや日本の労働人口の三分の一にせまる勢いだ。始めてこの制度が導入されたときには、労働市場の弾力化であるとか、働く人のニーズへの対応とか、随分と勝手な理屈が述べられたものだが、その本質は、安くしかも便利に労働者を使うことにあったことは否めない。

安く人を使うという点に関しては、この制度ほど成功したものはない。おかげで労働者一人当たりの雇用コストは劇的に縮減し、そのおまけとして大量のワーキングプアが生み出された。

便利に人を使うと言う点では、これまでも非正規雇用は企業の安全弁のように使われてきたが、ここにきて一気にその効用を発揮した形だ。制度の本質である短期雇用の趣旨を最大限に活用して、非正規雇用労働者の首を切る企業が続出しているからだ。

非正規雇用労働者はこれまで、自分たちの境遇について声高に叫ぶことがあまりなかった。もともと組織された人々ではないので、一人一人の声が大きな力にならない。だが昨今のように、ぼろ雑巾のように扱われ、何らの権利も主張できない情況が蔓延するようでは、立ち上がらざるを得ないだろう。

そんな人びとが労働組合を結成して、厚生労働省など労働問題を担当する国の機関に申し入れを行なうようになったことは、テレビや新聞の伝えるとおりだ。だが今のところ、国は非正規雇用の抱える問題に、真剣に取り組もうとしているとはいえない。

麻生総理大臣は例の調子で、非正規雇用労働者の雇用を確保するよう経済団体に申し入れるといってお茶を濁したが、名指しされた当の経済団体は、努力しますなどといっている口先で、経団連会長の関連企業が率先して非正規雇用労働者の首を大量に切っている始末である。

口先だけではすまないと見た政治家たちは、非正規雇用労働者の苦境を打開するために、何らかの施策を考えねばなるまいと思ったのだろう、非正規雇用の労働者一人につき100万円の助成金を出すなどと、馬鹿げたことを言い出すものもある。

非正規雇用労働をめぐる問題は、補助金を出したからといって解消できるものではない。安く便利に使われている現状にメスを入れ、彼らの働く上での権利を確立することが本筋だ。


関連リンク:日本の政治と社会

  • 相次ぐ企業の採用内定取り消し

  • 貧困ビジネス

  • 麻生さん、それではいかんタイ

  • ワーキングプア:平成の経済難民




  • ≪ 裁判員候補者への通知 | 日本の政治と社会 | 国の出先を統廃合して35000人削減:分権委2次報告 ≫

    トラックバック(0)

    トラックバックURL: http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/1226

    コメントする



    アーカイブ

    Powered by Movable Type 4.24-ja

    本日
    昨日

    この記事について

    このページは、が2008年12月 7日 21:33に書いたブログ記事です。

    ひとつ前のブログ記事は「10人のインディアン Ten little Indian boys :マザーグース」です。

    次のブログ記事は「ジョン・ダン John Donne:生涯と作品」です。

    最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。