介護の現場において、ロボットの果たす役割がこれまで以上に多彩になってきそうだ。ただに身体的な面の介護にとどまらず、認知障害のような精神作用にかかわる介護も日程に上ってきたらしい。まだまだ人間のヘルパー並というわけにはいかぬが、主人の基本的な行動パターンを覚えこんで、それから逸脱するような行為に対し警告を発するくらいのことはできるまでになったそうだ。
たとえば、日常特定の薬を服用している患者が、今さっき飲んだ薬のことを忘れて、また同じものを飲もうとした場合、ロボットはそれを正常な行動パターンからの逸脱と判断して警告を発する。その様子を先日テレビが紹介していたが、ロボットは主人に対して、「その薬は1分48秒前に飲んだばかりです」と警告していた。筆者はそれを見て思わず笑ってしまったものだ。
こんなロボットが身近にいたら、日常の生活は随分と楽になるだろう。
いい悪いは別にして、我々の日常生活には無駄な部分が多すぎるが、その多くは物忘れに起因している。年をとると人間というものは、直近のことをすぐに忘れてしまうものだ。昔のことはいつまでも覚えていられても、先ほど自分が何を思い、何をしていたかについては、驚くほど速やかに忘れてしまう。その結果同じことを幾度もくりかえしたり、傍らに置いた老眼鏡の所在を失念し、家中を探し回ったりする。
だからそんな時、介護ロボットがいち早く指摘してくれれば、我々は無駄な行動をすることが少なくなるし、イライラの種もそれだけ減るというものだ。
だが人間の精神作用というものは、以外に複雑なものだから、外面の兆候から内面の状態を推察することは非常にむつかしい。内面の状態から外的行動の異常を予測することはもっとむつかしい。ロボットでなくても、患者の内面の動きを探り当てて、そこに異変を感じ取ることができるヘルパーは皆無に近いだろう。
そこで勢い、ロボットが認識できるのは、日常のパターン化された行動様式と、それからの逸脱ということになる。つまり外面の行動を観察し、それが日常の行動パターンから外れている場合、異常と判断するわけだ。
これでは適用できる範囲が狭いようにも受け取れるが、我々の行動の大部分は反復性で単純なものが占めている。そこでの異常を是正できるだけでも、大いに意味がある。
筆者などは最近一段と物忘れが激しくなり、いらぬエネルギーを使うことが増えた。その結果同じような行動を繰り返しすることが多い。これは外面に現れる異常だから、ロボットにも認識しやすいはずだ。もしロボットが早めにその異常を指摘してくれたら、大いに助かるに違いない。
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