聖なるソネット1(翼をください):ジョン・ダン

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ジョン・ダンの詩「聖なるソネット1(翼をください)」(壺齋散人訳) -Z a

  あなたは私を作られた なのに私は滅んでいく
  私を回復してください でないと終わりがやってきます
  私は死に向かって走り 死もまた私を迎えようとする
  私のすべての喜びも 昨日の夢のように思われるのです

  もはやかすみかけた目を 動かすこともならない
  背後には絶望 前面には死があって 恐怖を投げかける
  私のか弱い身体は 自らの罪によって消耗し
  地獄へと向かって 旅立つのです

  あなたは一人天上にいる そのあなたを見上げるとき
  私はもう一度立ち上がれるのです
  でも因縁の仇敵たる死に誘惑されて
  しっかりと持ちこたえることができない
  私に死から逃れ去る翼をください
  鉄のように重くなった私の心を引き上げてください


聖なるソネットと題する19編の詩は、副題に「神への瞑想」とあるように、ダンの宗教的な心情を歌ったものだ。大部分は1633年および1645年の詩集に収められた。内容からして聖職についた1615年以後のものだろうといわれているが、それ以前の作も一部含まれているとする見方もある。

神への渇仰やその裏返しとしての不安、死への恐怖やその克服など、宗教的なテーマの誌が並んでいる。

トップに位置するこの詩は、死の恐怖とそこからの救いについて、神に呼びかけている。「翼をください」とは、死の恐怖から逃れて、永遠の時空を羽ばたきたいとの願望を現しているのだろう。

HOLY SONNETS1.

  THOU hast made me, and shall Thy work decay ?
  Repair me now, for now mine end doth haste ;
  I run to death, and Death meets me as fast,
  And all my pleasures are like yesterday.

  I dare not move my dim eyes any way ;
  Despair behind, and Death before doth cast
  Such terror, and my feeble flesh doth waste
  By sin in it, which it towards hell doth weigh.

  Only Thou art above, and when towards Thee
  By Thy leave I can look, I rise again ;
  But our old subtle foe so tempteth me,
  That not one hour myself I can sustain.
  Thy grace may wing me to prevent his art
  And thou like adamant draw mine iron heart.


関連リンク: 英詩のリズムジョン・ダン John Donne

  • 英詩と英文学

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