ハドソン川不時着事故はバード・ストライクが原因

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昨日(1月16日)、ニューヨークのラガーディア空港を飛び立った旅客機がエンジン・トラブルを起こし、ハドソン川に不時着するという事故が起きた。飛行機には合せて155人が乗っており、一歩間違えば大惨事になったところを、全員救出されたという。

事故の原因は、バード・ストライク Bird Strike によるものと見られている。当時飛行機の進路には大量の鳥(カナダガン Canada Geeseらしい)の群れが飛んでおり、それがエンジンに衝突して、両翼ともにエンジンストップを起こした可能性が高い。

それにしても、何故ちっぽけな鳥が巨大な飛行機を麻痺させることができるのか。筆者には驚きだったが、専門家によれば、日常的に起こる確率が高いのだという。

離陸直後のジェットエンジンには大きな推進力がかかっており、吸い込み口付近には真空の空間が形成されて、そこに空気を引き寄せる巨大な圧力が生ずる。だから飛行機と鳥とが接近した場合、鳥は容易にエンジンに吸い込まれるというのだ。

シミュレーションによれば、自足150マイルの速度で飛んでいる飛行機に、体重12ポンドのカナダガンが衝突した場合、1000ポンド(450キロ)の物体を3メートル上から落したのと同じ衝撃が生ずるという。かなりな衝撃である。

一方エンジンの入り口部分は薄い羽が何枚も重なった構造をしている。そこに鳥が衝突するとまず一枚の羽が損傷し、それが隣接する羽に接触してさらに損傷を拡大し、連鎖的に次々と羽が壊れる結果、エンジンがストップする。

今回の場合には、両翼のエンジンについて、このようなプロセスが進み、飛行不能になったものと見られる。

バードストライクによる大きな事故は、過去にもいくつかあった。1988年には、エジプトで離陸直後の飛行機が鳩を吸い込んでエンジンを損傷、35人が死亡する事故があった。また1995年にはアメリカで、旅客機がカナダガンと接触してエンジンを損傷、24人全員が死亡している。

ラガーディア空港は海上に面しているため、周囲には海鳥が繁殖し、バード・ストライクの危険は以前から指摘されていたらしい。そこで空港周辺には鳥の巣になるようなものを撤去するなど、それなりの対策が採られてきたというが、相手は自然の生き物、万全ではありえなかった。日本の羽田空港なども、海上に面しているため、同じような事故が起きる可能性はゼロではない。

今回の事故では機長の冷静な判断が評判を呼んだ。何しろ一歩間違えれば大惨事になったところだ。

飛行機はラガーディア空港を離陸した後北に向かい、その後進路を変えて、ハドソン川沿いに南に飛んで、不時着のタイミングをうかがった。一旦不時着するや、飛行機が海面に浮かんでいるうちに、沿岸から救助艇がかけつけ、間一髪のタイミングで乗客たちを助け出したということだ。

当日の気温は氷点下6度、水面の温度は2度だったという。乗客たちはかろうじて水面に浮かんでいる両翼の上に立って、救助を待ったという。


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