李白の五言律詩「孟浩然に贈る」(壺齋散人注)
吾愛孟夫子 吾は愛す孟夫子
風流天下聞 風流 天下に聞こゆ
紅顏棄軒冕 紅顏 軒冕を棄て
白首臥松雲 白首 松雲に臥す
醉月頻中聖 月に醉ふて頻りに聖に中(あた)り
迷花不事君 花に迷ひて君に事(つか)へず
高山安可仰 高山 安んぞ仰ぐ可けんや
徒此揖清芬 徒(た)だ此に清芬を揖す
私が敬愛する孟浩然先生、その風流ぶりは天下に聞こえている、紅顏の青年時代より官位につくことを捨て、白首の老人になっても松の間に寝起きしている
月に醉ってはしきりに酒を飲み、花に迷っては君に仕えようともしない、高山のように高い志の先生をどうして仰ぎ見ることが出来ようか、ただただ先生の清らかな姿にご挨拶申し上げるまでだ
李白が孟浩然と始めてであったのは30歳ころのことだ。孟浩然は李白の家がある安陸から近い襄陽に隠棲していた。李白は孟浩然の人柄にすっかり魅了され、そのとりことなったようだ。
孟浩然は李白より12歳年長で、生涯官に仕えなかった。野に伏しては「春眠暁を覚えず」に代表されるような、超然とした詩を作った。そこのところが李白の琴線に共鳴したのだろう。この詩のなかでの孟浩然はまさに理想の隠者として描かれている。
軒冕は役人の乗る馬車と官帽のこと、両者合わせて官位の象徴である。聖は酒をさす、濁酒を賢、清酒を聖と呼んだ
関連リンク:李白:生涯と作品
コメントする