Japan Times の Web 判を覗いていたら、オンライン翻訳ツールに関する面白い記事が目に付いた。東大の影浦峡氏らのグループが四月に立ち上げた「みんなの翻訳」というサイトを紹介したものだ。ここにビルトインされている QRedit というツールを使うと、Web 上に公開されている英語の記事を、オンラインで効率よく翻訳できるという。
我々が翻訳作業を行う際には、もとになるテキストと、それを日本語に翻訳するための媒体のほかに、オンラインであれ紙ベースであれ辞書を用意する必要があり、そのほかにWikipedia などの情報源へのアクセスも必要になる。このツールは今まではばらばらになっていたこれらの要素を、オンライン上のひとつの画面に一括して表示させることによって、翻訳作業を快適かつ迅速に行えるようにしたというのだ。
そこで早速「みんなの翻訳」のサイトにアクセスして、QRedit の体験版を試してみた。
初期画面に Web 上の記事の URL を打ち込むと、翻訳ツールの画面が出てくる。画面は左右に分かれていて、左側に記事のテクストが表示される。翻訳者はそのテクストを見ながら、右側の画面に翻訳した文章を打ち込むというものだ。
辞書や Wikipedia などの情報源はポップアップ画面として表示される。テクストの中の文字列をクリックするとポップアップ画面が出てきて、対応する意味が一覧表示されるほか、Wikipedia の関連ページも表示することができる。
なるほどこれなら、翻訳に必要な道具立てが一望のもとにそろうので、快適に翻訳できると感じた次第だ。しかもテクストは Web 上のものを表示させるだけでなく、オフラインのものをペーストすることもできる。今のところ英語和訳、日本語英訳しかカバーしてないが、他の言語をもカバーできるようになれば、筆者のようにフランス語の文章を翻訳してサイトに載せているものなどには心強い味方になる。
開発者たちは、このツールが普及することで、誰もが気軽に翻訳作業に参加し、その結果海外の情報がいち早く日本の読者に届けられることを期待しているという。というのも、このツールで翻訳された文章は、そのまま Web 上に公開される仕組みになっているからだ。
インターネットが加速的に進歩し、Web 上に日々膨大な情報が追加されているのに、日本の読者は言語の壁に隔てられて、その恩恵を十分にこうむっているとはいえない。Google などは自動翻訳のツールを用意しているが、それらはこと日本語に関しては、実用に耐えないというのが現状だ。だから人の手による地道な翻訳の必要性はまだまだ消えていない。
このツールを用いてすばやく翻訳する人々の集団が育って、海外の有意義な記事が迅速に日本語で紹介されるようになれば、日本人も世界中の動きについていくことができる。単に翻訳の利便性を高めるだけではなく、日本の文化の発展にも寄与したい、そう開発者たちはいっている。
(参考)みんなの翻訳へのリンク
関連リンク: 日々雑感
コメントする