アメリカの極右過激派:ポール・クルーグマンの警鐘

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ポール・クルーグマンがニューヨーク・タイムズのコラムの中で、アメリカの極右過激派の最近の動きについて警鐘を鳴らしている。連邦公安局のレポートを引き合いに出しながら、最近のアメリカは1990年台前半と似ているところがあるというのだ。

1990年台前半には、極右の動きが活発化し、オクラホマの連邦政府ビル爆破などを引き起こした。この時代は、クリントンが1993年に大統領に就任し、社会の民主化にたいする空気が高まった時期だ。そうした空気に右翼が過敏に反応し、テロに走る動きが生まれた。最近もそれに似ている状況が生じているというのだ。

たとえば堕胎の問題をめぐって、それを女性の美徳を損ねるものだと信じる熱狂的な右翼が、容認派のティラー氏を暗殺した。またホロコースト博物館では、右翼による発砲事件がおきた。クルーグマンはこうした動きは右翼が活発化している兆しであり、今後これらが大きなテロにつながらないよう、監視を怠らないことが必要だという。

クルーグマンは、こうした動きには、アメリカの保守的なメディアが関与していると非難している。彼らが執拗なほどに、右翼的な心情を煽り立てているというのだ。

クルーグマンによれば、彼らのターゲットはオバマ大統領だ。オバマはアメリカの良き伝統を破壊しようとしている、彼はアフリカの出身で、しかもイスラムの親派だ、その政治姿勢はアメリカを全体主義的な国家に作り変えようとする野望にみちているといった具合に、あからさまなオバマ攻撃を展開している。

RNCなどは、オバマの政策はアメリカを社会主義国家に作り変えようとするものだと批判し、アメリカの自由の伝統を守るためには、オバマによる抑圧を跳ね返さねばならないと煽り立てている始末だ。

クルーグマンは、メディアによるこうした扇動が、右翼的な心情を刺激し、一匹狼による散発的なテロや、過激派グループによる大規模なテロを露払いすることになりかねないと、警鐘を鳴らしているわけだ。

こうした風潮は、歴史上初めて黒人を大統領にいただきながら、それを十分に咀嚼できないでいることの、アメリカ社会の反映かもしれない。だがこうした風潮をメディアや政治的な反対勢力が利用し、国民の間に不条理な憎しみを掻き立てることは、国全体のあり方として、いいことではない、クルーグマンはそういいきる。

クルーグマンは、もともと率直な言い方をすることで知られているが、このコラムの中での右翼非難はきわめて単刀直入との印象を与える。まるで喧嘩をうるような言い方にも受け取れる。それだけ彼の危機意識が強いということか。

(参考)The Big Hate By Paul Krugman





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