日本のこれから:低炭素社会への国民の意思

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地球温暖化の問題を、国民一人一人に考えてもらうおう、こんな問題意識があったのだろう、NHKが環境大臣とともに、国民各層から幅広く人を集めて、この問題を論議させる番組を放送した。題して「日本のこれから」。筆者はこの番組を見ながら、今日の日本社会の縮図を見るような気がして、非常に複雑な気持ちになった。

番組が設定した問題自体は非常に単純なものだ。確実に進行する地球温暖化についての各国の取り組みを紹介し、それに対して日本政府が打ち出した低炭素社会へ向けての具体的な施策を取り上げて、これをどう評価するか、また政府が国民の一人一人に求めている内容を、積極的に実施する意思があるかどうか聞くものだった。

ところがこれに対する出演者の反応が非常に複雑なのである。地球温暖化はいまや待ったなしの課題であるから、それに表立って反対するものはいない。だがそれについての具体的なメニューを突きつけられると、反応は一様ではないのだ。

政府が国民に求めているのは、日本として炭素排出量を15パーセント削減するために、低エネルギーでしかも低炭素な生活への転換、具体的には石油を節約できる自動車の購入や、家庭での太陽光発電といったものだ。

政府は家計部門における貢献が、15パーセント達成のキーになると考えているから、手厚い優遇措置を抱き合わせにして、国民に協力を呼びかけている。ところが、積極的に実施すると答えたものは、電話アンケートをふくめて40パーセントにとどまった。60パーセントの人は、しないと答えたのだ。

しないと答えた理由には、自分には当面そんなことをする経済的な余裕がないといったほか、まだ使えるものを捨ててまで買い換える必要はないとしたり、そもそも、中国やアメリカが消極的な中で、日本人だけ厳しい目標を課されるのは不公平だといったものもあった。

こうした人々も、政府の施策を頭から否定しているのではない。しかし自分の生活を省みれば、とてもそんなことをしていられる余裕はない。政府にしたって、環境を良くすることと同時に、あるいはそれより前に、国民の生活をよくすることを、もっと考えてもよいではないか。そう思っている人が多いように思えた。

いまや日本の社会は、ワーキングプアと呼ばれるような低所得の人々であふれている。彼らは今日一日をどう生きるかに精一杯で、明日のことはどうなるかわからない、まして将来のことまで考える余裕などない。

そんな明日の希望が持てないものに、未来への希望を語っても、すんなり受け取れるわけにはいきませんよ、人々はこう叫んでいるように思えた。

この番組は図らずも、今日の日本社会の閉塞状況をあぶり出していたようにも思えたのである。





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これまでの消費社会を見直すことは是非とも必要だが、低炭素社会とか何とか言う前に、この温暖化は本当に人間活動が原因なのだろうか。陸地で人間活動が行われている面積は2ないし3パーセントらしいし、それを地球表面全体から見れば、、、、とても影響を及ぼせるような気がしないけれど、どうなのだろう。自然を制御できると思っている人間の傲慢なのではないか。
一方で、太陽の活動から寒冷期を予測する科学者もいるらしい。本当のところはどうなのだろう。

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