ピラミッド建造の秘密:フランスの建築家ウーダン氏の内部トンネル説

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ピラミッド建造の秘密に迫るNHK特集番組「エジプト発掘:隠された回廊の謎」を見て、久しぶりにイマジネーションをかき立てられた。

番組はフランス人建築家ジャン・ピエール・ウーダン氏を登場させて、氏がかねて唱えてきた内部トンネル説を紹介していた。これは、外部から石を積み上げてピラミッドを造ったとする従来の考え方をあらためて、ピラミッドの内部にトンネルを造り、それを石の運搬ルートとして活用することで、効率よく石を積み上げたというものだ。氏はこの説を、建築家らしいイマジネーションと科学的検証を組み合わせることで、論証していった。そこのところが、筆者のような門外漢にも、刺激的にうつったのだ。

ウーダン氏は「クフ王のピラミッド」を例にとって、自説を展開していく。この最大のピラミッドは高さが147mもあり、320万個の石を積み上げてできている。記録によれば、このピラミッドは20年間で作られたというから、2秒おきにひとつづつ運び上げなければ間に合わない勘定だ。なぜそんな途方もないことが可能だったのか。

石は平均25キロの重さがある。これを人間の力で運び上げるためには、緩やかな斜面でなければ無理だ。その勾配はせいぜい5度が限度だ。仮に斜面をピラミッドの外側に向かって一直線に設けたとすると、最終的な長さは1・6キロにも達する。これではいかにも不効率過ぎて、限られた時間内に巨大な建築物を作ることはできない。

斜面にはピラミッドから外側に一直線にのばしたもののほか、ピラミッドの外周部をぐるりととぐろを巻くようなかたちで取り付ける方法もある。これだと作業効率はずっとよくなるが、斜面がピラミッドの輪郭を覆い隠すかたちとなり、作業に必要な正確な測量ができない。

こうして氏は内部トンネル説を思いつく。これはピラミッドの外壁に接して緩やかなトンネルを作り、それを利用して石を積み上げるというものだ。これだと運搬用斜面の構築に必要な石材はピラミッドの一部となり、資源を無駄にすることがない。また運搬が屋内作業となるため、砂漠の過酷な自然現象にも耐えることができる。考えられる限り、もっとも理想的な方法だ。

氏の説が本当だとしたら、現存するピラミッドの内部にトンネルのあとがあるに違いない。そこで別のピラミッドで検証したところ、そのような後が確認された。またクフ王のピラミッドそのものからも、非常に蓋然性の高いトンネルの形跡が見つかった。こうしてひとつの仮説に過ぎなかったものが、すこしづつ真相へと近づいていったのである。

ピラミッドにはもうひとつ謎がある。ピラミッドの中心部には王の間とよばれる大きな空間があり、その天井には何層にもわたって重さ60キロの巨岩が積み重ねられている。高さが60メートルもある天井に、こんな巨大な石をどうやって運んだかという謎だ。

構造上外壁近くの内部トンネルは利用できないことがわかった。別の方法によらなければならないが、こんな石を人間の力だけで運び上げるには600人もの人力が必要だし、勾配もそう急にすることはできない。

そこで氏は、錘を活用したのではないかと推測した。現代のエレベータにも使われている、バランスをとるための錘だ。これを取り入れることによって、人が引っ張りあげる力のほかに、錘が引き寄せる力が加わり、石の牽引が容易になる。実際この方法を取り入れることで、人力は600人から200人以下に節約できることがわかった。

この説はまだ信憑性が広く認められるにはいたっていないが、事象を無理なく説明できるとして高い評価を得るようになっている。エレベータに着目したのは、いかにも建築家らしい発想だ。

ピラミッドが作られたのはいまから5000年前のことだ。その頃のエジプト人がてこの原理や滑車についての知識を持っていたらしいことはわかっていたが、現代のエレベータと同じような技術まで習得していたとすれば、古代人に関する現代人の見方も、大きく変わることだろう。





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このページは、が2009年7月 7日 19:41に書いたブログ記事です。

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