筆者老年の趣味のうちでも水彩画はもっとも気に入ったものだ。五十の峠を越してから描き始め、最初は高名な水彩画家を手本にして、構図のとり方やら色の使い方など、手探りしながらやっていた。そのうち鈴木輝美画伯の指導を受けるようになり、少しは絵らしいものになってきたのではないかと思うのだが、なかなか上達しないのが心苦しい。だがこれはあくまで趣味なのだからと、自分に言い聞かせて精進している。下手なりに自得できれば、それでよいではないかと。
最近一年ほどの間は専ら花の絵を描いてきた。花は風景と違って対象にとらわれる度合いが少ないので、構図や配色を大胆に試みることができる。明暗対比とか色の調和について、自分なりに工夫しているうち、良い絵というものはどういうものかについて、多少は手がかりが得られるような気にもなった。
筆者の絵はもとより具象画で、対象を比較的忠実に再現しようとする癖がある。細部にこだわる余り、全体として精彩に乏しくなりがちだ。それはある程度配色の工夫によってカバーできないこともないが、やはり限度がある。もう少し自由な絵をかけないものかと、悩みは尽きることがない。
しばらく風景を描いたことがないので、これから当分風景画をやってみようかと思う。筆者が水彩画と始めてとりくんだのは風景画であるし、屋外のスケッチ作業は絵を描く楽しみのほかに、体を動かすことの効用もある。
そんなわけで、いろいろな風景画家の画風をあらためてチェックしてみた。どれが自分の画風にとって参考になるか、また構図や色の配置を決める上で、どんなことに気を使えばいいのか、先人から学びなおそうと思ったからだ。
上の絵は、ジョン・テイラーというアメリカの水彩画家の絵を参考にして描いたものだ。風景画の生命は光にあると思うので、それをどう表現するかによって、画風がおのずから定まる。この絵を描くにあたっても、常に光を意識していた次第だ。
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