ホッケ柱とほっけの太鼓

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ホッケのひらきは安くてうまいというので、いまでは庶民の食卓に欠かせないものになった。筆者の家の食卓にもたまに出てくるし、家族はみなうまそうに食っている。だが筆者にはあまりありがたくない。決して嫌いなわけではないが、うまいとも思わないのだ。

筆者は子供の頃にほっけを食ったことが無い。子供の頃に母親からあてがわれたものは、大人になってもうまく感じるものだ。そんな背景がないから、この魚をありがたいと思わないのかもしれない。

昔は、誰にも見向きもされなかったそうだ。ほっけといえばまずい魚の代表だといわれた。それが大量に食われるようになったのは、ニシンが取れなくなって以来のことらしい。ホッケとニシンは同じような漁場でとれるから、猟師たちはとれなくなったニシンのかわりにホッケをとって、それを流通させてきたのだろう。

ホッケはアイナメの仲間で、普段は海底にへばりつくようにして暮らしている。それが春の一時期、プランクトンを求めて水面近くに出てくる。そのときに数万匹のホッケが群れをつくり、柱のような形を作る。ホッケ柱として知られている現象だ。世界の北の海に広く分布するホッケだが、北海道の奥尻島近海でだけ見られる珍しい現象だという。

何故こんな現象が起こるのか、NHKの番組がそのメカニズムを解説していた。

普段海底にいるホッケは春になって海面が明るくなり、そこにプランクトンが集まっていることを信号として察知すると、いっせいに浮上する。そのときホッケの行動を制御するメカニズムが柱を形成させるということらしい。

ホッケには浮き袋がついていない。だから浮上するためには体を縦にして、尾びれで勢いよく水をかかねばならない。ホッケには仲間と同じ行動をする習性があるため、一団となって浮上していくわけだが、それだけでは柱にはならない。水面近くでプランクトンを食べたホッケは、満腹すると下の方へ押し戻される。そこへ別のホッケが上ってきてプランクトンを食べる。こうして群れの中で上下運動が生じている間に柱の形が進むというわけだ。

この柱のすごいところは、それが水流を巻き起こして、渦を作り出すことだ。これはホッケたちが水を下へ向かって勢いよくかいていることの結果だ。この渦上の水流が生じるおかげで、プランクトンは水流に乗って柱の下の方へも導かれる。だから柱の中に居るホッケたちは、こぼれることなく餌にありつくことができる。

解説者の一人はこの現象を人間の都市にたとえていた。群れることによって快適に生きることが人間の都市生活と似ているというのだ。面白い着想だ。

ホッケの名の由来については、確かなことはわかっていない。北の海でとれるところから、北海がなまってホッケになったのだろうとする説もある。また「ホッケの太鼓」という言い方があるが、これは魚のホッケとは関係がないようだ。

ホッケの太鼓は「どんどんよくなるほっけの太鼓」という形で使われる。ホッケは出世魚だから、それが名を変えて大きくなる間に、どんどん良くなるなどと解説されることもあるが、もともとは日蓮宗の行事から派生したものだ。

日蓮宗では法華経を読みながらうちわ太鼓を叩く。「どんどんよくなる」とは太鼓の音が「ドンドンとよく鳴る」という意味なのである。

法華太鼓は日蓮宗の御会式などで大規模に鳴らされる。池上の本門寺や雑司が谷の鬼子母神では毎年の秋に、大規模な法華太鼓のパレードが繰り広げられるから、是非一見することをお勧めする。





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このページは、が2009年9月 9日 20:10に書いたブログ記事です。

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