杜甫の五言律詩「春日李白を憶ふ」(壺齋散人注)
白也詩無敵 白也 詩 敵無し
飄然思不群 飄然として思ひ群ならず
清新庚開府 清新 庚開府
俊逸鮑參軍 俊逸 鮑參軍
渭北春天樹 渭北 春天の樹
江東日暮云 江東 日暮の云
何時一尊酒 何れの時か一尊の酒
重与細論文 重ねて与(とも)に細やかに文を論ぜん
李白の詩は無敵のすばらしさ、詩風は飄然として思想は俗を超越している、清新たることは庚開府の如く、俊逸なことは鮑參軍のようだ
今、自分は渭北にあって春天の樹にたたずみ、君は江東にあって日暮の雲を見送る、いつの日か再会して一尊の酒を酌み交わし、昔のように文学を論ずるときが来るだろうか
杜甫は李白とともに過ごした日々がよほど忘れがたかったのだろう、李白と別れた後も、常に思い起こしていたようだ。晩年にいたっても、李白を夢見る詩を作っている。彼が李白を歌ったものはあわせて15編にのぼる。これに対して李白が杜甫を歌ったものは4篇にすぎない。
この詩は李白の偉大さをたたえ、いつか再びともに過ごせる日を願っているものだ。もっとも杜甫は、李白と出会うことは二度となかった。
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