シュルーズベリーの戦場を、フォールスタッフは命からがら逃げ回る。そのうちウォルター・ブラントの死体にめぐり合う。ブラントはホットスパーによって殺され、地面に倒れていたのだった。
フォールスタッフ;ロンドンじゃ勘定を払わずに食い逃げしていたが
ここじゃそういう訳にいかぬ 頭に鉄砲玉の勘定書きを食わされかねん
おや 誰だ? サー・ウォルター・ブラントじゃないか
名誉はあんたのものだ 掛け値なしに!
わしは溶けた鉛みたいに熱くなってきたぞ そのうえ体が重い
どうか鉛玉など食らいませんように!
重いものは自分のハラワタだけで十分だもんな
わしの兵隊どもはあらかた死んでしまって
今じゃ150人中3人も生きてはいない
やつらはこれから町外れで乞食でもやるしかあるまい(第五幕第三場)
FALSTAFF; Though I could 'scape shot-free at London,
I fear the shot here; here's no scoring but upon the pate.
Soft! who are you? Sir Walter Blunt:
there's honour for you! here's no vanity!
I am as hot as moulten lead, and as heavy too:
God keep lead out of me!
I need no more weight than mine own bowels.
I have led my ragamuffins where they are peppered:
there's not three of my hundred and fifty left alive;
and they are for the town's end, to beg during life.
「名誉はあんたのものだ」と叫ぶことには、ブラントが死んでいることを確かめる意味がある。死んで名誉を云々されるより、不名誉でも生きていたほうがいい、それがフォールスタッフの考えだ。だからこの言葉には、名誉が死と同義であることを感じさせるところがある。
わしにはサー・ウォルターのような苦々しい名誉はいらぬ
それより命が欲しい もし助かるならそれでよし
助からぬなら 名誉が招かれざる客として現れ 一巻の終わりだ
I like not such grinning honour as Sir Walter hath:
give me life: which if I can save, so;
if not, honour comes unlooked for, and there's an end.
フォールスタッフはこういって、戦いが白熱してくると、死んだまねをして、相手の追及をかわそうとするにいたる。
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