環境ビジネスを制するものは誰だ

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地球温暖化対策の重要性が世界の共通認識となり、二酸化炭素の削減 No Emission が喫緊の課題となる中で、クリーンエネルギーの実現に向けた環境ビジネスが、いまや熾烈な競争の現場となりつつある。なかでもエコカーをめぐる開発競争は、既存の自動車メーカーのほかに第三者の参入が著しく、中国を始め新興国の中小業者を巻き込んで、世界的な規模の競争へと発展している。その競争を制したものが、21世紀の環境ビジネスのチャンピオンになることは、ほぼ間違いないだろうと思われるのだ。

これまでエコカーといえばハイブリッド車が主流だった。これはガソリンエンジンを基礎にして電気エネルギーを抱き合わせたものだから、トヨタなど既存の自動車メーカーにとって有利な戦略としての側面を持っていた。だがここへきて、エコカーの主流は一挙に電気自動車へと変わりつつある。

電気自動車はエンジンを搭載する必要がないので、軽量化や形の柔軟性に十分対応できる。最大の特徴は、バッテリーとモーターを組み合わせる技術さえあれば、そんなに高度な技術や巨大な設備を必要としないことだ。要するに新規事業者が参入しやすい分野なのだ。そこに着目して、中国やインドには、スモール・サウザンドとよばれる膨大な数の中小メーカーが生まれた。

いまや彼らの実力は、既存の自動車メーカーの将来を脅かし始めている。日本ではニッサンが電気自動車の開発に社運をかけて取り組んできたが、中国にはそのニッサンをあっといわせるような電気自動車を商品化する勢いの企業が現れた。ニッサンは充電一回につき160キロの走行を売り物に市場を席巻しようとしているが、300キロの走行を歌い文句にする企業が現れたのだ。しかもニッサンの商品化はまだ二三年先のことであるのに対し、すでに商品化の段階にまでたどり着いている。このままだと電気自動車市場のイニシャチヴを中国企業に奪われかねない。

電気自動車の命はバッテリーだ。その能力如何によって走行距離が制約される。バッテリーの原料となるのはリチウムやレアアースであるが、中国はその豊富な埋蔵資源を持っている。電気自動車の開発にとって非常に有利なわけだ。中国政府はこうした条件を生かして、将来電気自動車分野で世界市場を支配する展望を抱いているといわれる。日本にとっては脅威となるところだ。

電気自動車の普及は都市生活のあり方にも甚大な影響を及ぼすと考えられる。自動車が単なる乗物であることを越えて、電気エネルギーの貯蔵源となることが出来るためだ。

たとえば家庭における太陽光発電に電気自動車を組み合わせる。これまでの太陽光発電はバッテリーと結びついていなかったため、余った電気は無駄になる一方、夜間は機能しないといった欠陥があった。ところが電力を自動車のバッテリーに貯めておくことができれば、昼は無論夜間でも電気が使えるようになり、電力は無駄になることがない。場合によっては太陽光発電だけで、生活に必要な電力が確保できる。自動車が家庭の電力供給システムの重要な構成要素になるわけだ。

個々の家庭内の電力システムを横につなぎあわせるとどうなるか。電力供給のネットワークが出来上がるだろう。都市全体がこのネットワークで結合されれば、電力を外部から供給されるのではなく、都市が自給できる体系が出来上がる。

すでにこのことに着目しているものがある。Google はITの情報網を活用して、電力供給の制御システムを立ち上げようとしている。スマートグリッドと呼ばれるものだ。これが完成すれば、各家庭における電力の状況を把握し、その需給をIT技術によってコントロールすることが出来る。

これが実現すれば、究極のクリーンエネルギー社会が可能になる。それは人間の生活様式を劇的に変えるばかりか、産業構造のあり方まで変えていく力を持っている。





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このページは、が2009年10月27日 19:55に書いたブログ記事です。

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