上の写真(AP提供)は、中国広州の魚市場でセリにかけられているワニだ。もちろん食用としてだ。日本人にはワニを食う習慣がないが、中国人にはご馳走らしい。実際ワニの肉は脂肪やカロリー分が低い割りに蛋白質に富んでいる。そのうえ淡白な食感は河豚の肉に似ており、食材としては最高の部類に属するといってよい。
ワニの中でも味がいいのはイリエワニ。大人は4-5メートルの大きさになるというが、食用に適しているのは比較的若いワニだという。写真のワニはせいぜい2メートル程度だから、まだ若い個体なのだろう。
このイリエワニの生産地として、海南島が知られている。かつて大詩人蘇軾が晩年に流されたこの島は、海の幸に恵まれていることで有名だが、大消費地たる広州に向けて、ワニの養殖も盛んだ。この写真に写っているワニも、海南島で育ったものかもしれない。
その海南島のワニの養殖場から、ワニが集団脱走をしたというニュースが、最近物好きたちの関心を引いた。
海南島の Web Site 海南網によると、島内長豊鎮にあるワニの養殖場からワニ46匹が逃げ出した。鎮当局では逃げたワニの捕獲に住民の協力を呼びかけ、殺して食べてもかまわないと強調した。なにせワニは、場合によっては人間の肉を食うほど凶暴な側面も持っている。
その後の調査で、この養殖場には8000匹以上のワニが飼われていたことがわかった。中国人がいかにワニの肉を好んでいるか、図らずも知れ渡った次第だ。
人間がワニを食うのは人間の側の都合だが、食われるほうのワニにしてみれば、つかまって皮をはがれ、ハンドバッグの材料にされるばかりか、自分の肉のことごとくを食われつくされるのは、いかにもやるせないことかもしれない。
そう簡単にはつかまらないよ、そんなワニの声が聞こえてきそうだ。
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