他人の洗濯物を見たくない権利

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ペンシルベニア州のパーカシーに住むカリン・フローリッチさん(上の写真:ロイター提供)は、自宅の庭先で洗濯物を干したところ、警察に呼び出されて注意されたそうだ。別に違法な行為をしたわけではないのだが、隣人から苦情が出ているという。匿名の苦情書類には、他人の洗濯物を見せ付けられるのは不愉快だから、やめさせて欲しいと書いてあったそうだ。

日光の恵みで洗濯物を乾かすのが好きな日本人にはなかなか理解できないが、アメリカでは屋外で洗濯物を干すことを嫌う文化があるらしい。法で規制する動きまでは見られないが、多くの共同体が紳士協定を結んで、屋外での物干しを自制している。

中には共同体内で独自なルールを定め、ルールを破って屋外に洗濯物を干した場合には罰金を科すというのもあるそうだ。ペンシルベニアの分譲マンションに住んでいるケヴィン・ファースさんは、ベランダに洗濯物を干したところ、ルール違反だとして100ドルの罰金をとられた。

彼は怒り心頭に達したという。自分が子どもの頃には、日光で洗濯物を乾かすのは当たり前のことだったし、太陽の恵みを受けて暮らすのは人間の生活にとってごく自然なことだ、それを規制するのはおかしいではないかと。

フローリッチさんやファースさんの疑問は我々日本人には理解しやすい。日光で乾かした洗濯物は気持ちがいいし、第一乾燥機で乾かすのに必要な余分なエネルギーを使わずに済む。アメリカ人が他人の洗濯物に敏感に反応するのは、不寛容に過ぎるのではないか。

そんなわけで最近は、日光で洗濯物を乾かすことに市民権を与えようとする動きもでている。Project Laundry List というグループは、日光乾燥が多くの点で利点を持つことを強調して、その普及に熱心だ。健康や家計によいばかりでなく、炭酸ガスの放出抑制にもつながる。洗濯物の屋外乾燥は、地球にやさしいライフスタイルなのだ。

こうした運動を受けて、いくつかの州では、少なくとも行政当局が屋外乾燥を罰するようなことを禁止する法令を成立させた。共同体の住民が自主規制することは差し支えないが、その規制をたてに、当局が違反者を罰するのは違法だという内容だ。

アメリカの社会は、住民が自分たちでルールを作って社会生活をコントロールしようとする傾向が強い。その結果ルールの内容が一部の成員に不寛容に傾くこともある。

洗濯物を見たくないという思いなどは、趣味の領域に属する問題だと思えるのだが、アメリカ人は趣味の相違が表面化して、人間同士互いに齟齬が生じるようになると、多数決の原理に訴えて解決しようとする傾向が強い。それが時には少数者に対する不寛容と結びつくわけだ。

しかしルール化が行き過ぎて、従わないものは罰則まで蒙るといった事態は、やはり異常ではないか。だからといって、そのルールを軽視することも出来ない。アメリカ人の多くは、こんなジレンマを感じているらしい。

なんと言っても自主ルールは、よきにつけ悪しきにつけアメリカ社会の伝統だ。(その点は、日本とは大いに異なる。日本ではまだ、ルールはお上が作るものという意識が強い。)

(参考)  U.S. residents fight for the right to hang laundry By John Hurdle





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他人の洗濯物を見たくないと言うのは多分にパンティー、ブラとかパンツ等の下着が干されてるのを見たくないと言う事ではないかと思います。 確かに集合住宅の窓、軒に洗濯物がはためいていると全体としての印象がバラバラなものになり、雑多な統一の取れてない感じは否めません。

洗濯物を太陽乾燥させる位気持ち良い事はありません。陽の光に乾かされた物はカラッとし、太陽殺菌され、良い陽の匂いがし、アア、子供時代が懐かしい~。本当はそうしたいのですが、私の所では出来ません。

私の住むコンドミニューム (日本で言うマンション)は言うまでもなく、窓は勿論、ベランダに洗濯物は干せません。 更に建物全体の印象の為、統一感を保つ為に外側から見えるカーテンの色は必ず白と決められています。 カーテンの裏側は何色にしようとそれは住む人の自由です。 引っ越して来た家族が窓際に沢山の縫いぐるみの動物を沢山並べたら、やはり駄目でした。

私も最近ニュースで気が付いたのは資源節約、省略エネの為、電気を食うドライヤーを使わず、陽に干す事が見直されて来ている事です。 個人住宅ではし易いでしょうが、集合住宅では何時になる事やら。

塀があり外から見えない家や裏庭のある家では昔から干しています。 農村地帯だったら、 誰も目くじら立てないかも知れません。 冷たい無機質な都会の方がそういうのに厳しいのかも知れませんね。

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