杜甫の五言律詩「幼子を憶ふ」(壺齋散人注)
驥子春猶隔 驥子 春猶ほ隔たる
鶯歌暖正繁 鶯歌 暖かく正に繁し
別離驚節換 別離 節の換るに驚ろく
聰慧與誰論 聰慧 誰とか論ぜん
澗水空山道 澗水 空山の道
柴門老樹村 柴門 老樹の村
憶渠愁只睡 渠を憶って愁ひて只睡り
炙背俯晴軒 背を炙って晴軒に俯す
わが子とは春になってなお隔たったままだ、鶯が暖かい日差しの中で鳴いているというのに、別離したまま季節が変わったのに驚くばかり、あの子の成長振りを話し合う相手もいない
澗水が流れる空山の道、老樹が生い茂る村の柴門のあたり、そこにいるであろうあの子を思っては憂いに伏し、背中を日にあぶりながら軒下に横たわるこのごろなのだ
至徳二年春望とほぼ同じころの策だろう。長安にとらわれの身となって、はるか彼方阜州に残してきた家族を思う歌だ。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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