新婚別:杜甫を読む

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新婚別は、結婚したかと思うとすぐに夫を戦争にとられてしまった新妻の嘆きを歌ったもの。兵車行の中で杜甫は、男を生むより女を生んだほうが増しだと歌っていたが、ここではその女でも夫を取られて寡婦になるくるいなら、はじめから生まなかったほうがよかったという。それほど人民の苦悩は深まっているように見えたのだ。

杜甫の五言古詩「新婚の別れ」(壺齋散人注)

  兔絲附蓬麻  兔絲蓬麻に附す
  引蔓故不長  蔓を引くこと故(もと)より長からず
  嫁女與徵夫  女を嫁して徵夫に與ふるは
  不如棄路旁  路旁に棄つるに如かず

カズラは蓬麻にまとわりつくけれど、そんなに長くはつるを引いていることができない、娘を嫁にやって兵士に与えるのは、路傍に捨てるようなものだ

  結髪為君妻  髪を結びて君が妻と為る
  席不暖君床  席君が床を暖めず
  暮婚晨告別  暮に婚して晨に告別す
  無乃太匆忙  乃ち太だ匆忙なる無からんや
  君行雖不遠  君が行遠からずと雖も
  守邊赴河陽  邊を守りて河陽に赴く
  妾身未分明  妾が身未だ分明ならず
  何以拜姑嫜  何を以てか姑嫜を拝さん

髪を結ってあなたの妻になりましたのに、あなたの床を暖めている間もありません、暮れに婚儀を挙げたばかりなのに、明日には別れなければなりません、余りにもあわただしいことではありませんか

あなたの行くところはそう遠くはないといえ、故郷を守るために河陽に赴きなさる、私の嫁としての立場はまだ固まったとはいえない故、お姑さんにどう接してよいかわかりません

  父母養我時  父母我を養ひし時
  日夜令我藏  日夜我を藏せしむ
  生女有所歸  女を生んで歸(とつ)がしむる所有らば
  雞狗亦得將  雞狗も亦將(おく)るを得
  君今往死地  君今死地に往く
  沈痛迫中腸  沈痛中腸に迫る
  誓欲隨君去  誓って君に隨って去らんと欲するも
  形勢反蒼黃  形勢反って蒼黃たり

両親がわたしを育ててくれたとき、それは大事にしてくれました、娘を産んで嫁がせるにあたっては、鶏や犬まで見送りしてくれたものです

あなたは今や死地に赴きなさる、激しい痛みがおなかを突き破るようです、あなたとともに行きたいと心から思うのですが、それでは余りにはしたないとも思われます

  勿為新婚念  新婚の念を為す勿かれ
  努力事戎行  努力して戎行を事とせよ
  婦人在軍中  婦人軍中に在らば
  兵氣恐不揚  兵氣恐らく揚がらざらん
  自嗟貧家女  自ら嗟す貧家の女にして
  久致羅襦裳  久しく羅襦の裳を致せしを
  羅襦不複施  羅襦複た施さず
  對君洗紅妝  君に對して紅妝を洗はん
  仰視百鳥飛  仰ぎ視る百鳥の飛ぶを
  大小必雙翔  大小必ず雙(なら)び翔る
  人事多錯迕  人事錯迕多けれど
  與君永相望  君と永く相望まん

どうか私たちの新婚のことは考えないでください、戦場で立派に振舞ってください、わたしのようなものが戦場にいては、兵士の士気が上がらないでしょう

わたしのような貧しい家の娘が、きらびやかな衣装を着られたことがうれしいのです、そんな衣装を身に着けるのはもうやめましょう、あなた一人のためを思って、白粉をつけることもやめましょう

空を見上げれば、飛んでいる鳥はことごとく羽を並べて夫婦一緒です、世の中は悲しいことがいっぱいですが、あなたのことをいつまでもお慕いしています


関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説





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