遣興三首其一:杜甫を読む

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杜甫の五言古詩「遣興三首其一」(壺齋散人注)

  下馬古戰場  馬より下る古戰場
  四顧但茫然  四顧すれば但だ茫然たり
  風悲浮雲去  風悲しくして浮雲去り
  黃葉墮我前  黃葉我が前に墮つ
  朽骨穴螻蟻  朽骨に螻蟻穴し
  又為蔓草纏  又蔓草の纏はるところと為る
  故老行嘆息  故老行くゆく嘆息す
  今人尚開邊  今人尚ほ邊を開くと
  漢虜互勝負  漢虜互ひに勝負あり
  封疆不常全  封疆常には全からず
  安得廉頗將  安んぞ廉頗將を得て
  三軍同晏眠  三軍同じく晏眠せん

古戦場で馬を下りて、四顧すればどこも茫然としている、風は悲しく吹き浮雲が通り過ぎる、紅葉は散って自分の前に落ちる

白骨にはアリが穴を穿ち、つる草がまとわりついている、老人たちはいうのだ、まだ辺境を開く必要があるのかと

漢と胡は戦っては勝ったり負けたりだ、だから国境が常に安全というわけではない、いつの日か廉頗のような優れた将軍が現れて胡を平定し、安心して眠れるときがやってきて欲しいものだ


秦州雑詩とほぼ同じ時期に同じような心境を歌ったものに「遣興三首」がある。第一首のこの詩は、胡と国境を接するこの地が、たびたび戦乱の地となり、多くの兵士が倒れたまま埋葬もされず、白骨となって散らばるさまを描いている。

老人たちは杜甫に向かって、こんなに多くの犠牲を出してまで辺境を開く必要があるのかと、訴える。それに対して杜甫は、いつか廉頗のような優れた将軍が現れて胡を平定してくれるだろうと、慰めの言葉をかけるのみだ。


関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説





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