上書き A Superscription:ダンテ・ガブリエル・ロゼッティ

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ダンテ・ガブリエル・ロゼッティのソネット集「命の家」から「上書き」A Superscription(壺齋散人訳)

  我が顔を見よ 我が名は「だったかもしれぬ」
  または「二度とない」、あるいは「遅すぎた」とも「さらば」ともいう
  海辺に横たわる汝の足元には打ち上げられた貝殻がある
  わしはそれをとって汝の耳に押し当てる

  また汝の目にはグラスを差し出す
  そこには汝の姿が映し出されていたが
  我が魔法によって形もなく揺らめき
  そこに汝の最後の姿が映ることはないのだ

  見よ 我が物静かなさまを すると一瞬
  汝の胸には軽い驚きの感情が横切るだろう
  汝のため息をやすらかにさせるあの翼の使者が来たのだ

  そのとき汝が目にするわしは微笑みながら
  汝の面影を引きはがして汝の心のなかに収めるだろう
  汝のその冷たい目は もはや眠ることもないだろう 


「命の家」第97番。死を歌っていることは確かだが、それが誰の死なのかはわからない。ロゼッティ自身の死かもしれない。


A SUPERSCRIPTION

   Look in my face; my name is Might-have-been;
   I am also called No-more, Too-late, Farewell;
   Unto thine ear I hold the dead-sea shell
   Cast up thy Life's foam-fretted feet between;
   Unto thine eyes the glass where that is seen
   Which had Life's form and Love's, but by my spell
   Is now a shaken shadow intolerable,
   Of ultimate things unuttered the frail screen.

   Mark me, how still I am! But should there dart
   One moment through thy soul the soft surprise
   Of that winged Peace which lulls the breath of sighs,
   Then shalt thou see me smile, and turn apart
   Thy visage to mine ambush at thy heart
   Sleepless with cold commemorative eyes.


関連サイト:英詩と英文学





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このページは、が2010年3月19日 20:40に書いたブログ記事です。

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