科学へ To Science:エドガー・ポーを読む

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エドガー・ポーの詩「科学へ」To Science(壺齋散人訳)

  科学よ お前は古い時代の生んだ娘
  うの目鷹の目であらゆるものを作りかえてしまう
  詩人の心がお前などにわかってたまるものか
  ハゲタカめ お前の翼は偽者なのだ

  どうして詩人がお前を愛したり 賢いなどと思うものか
  詩人はお前に邪魔されるのが迷惑なのだ
  詩人は不屈の翼をはばたいて星空高く舞い上がり
  大空から宝石のかけらを盗むのが好きなのだ

  お前はディアナを月の馬車から引き摺り下ろし
  木の精ハマドリアドを森の中から追い出し
  他の星に隠れさすよう駆り立てたのだ

  お前は水の精ナイアードを水の中から締め出し
  エルフィンを森から追いたて わたしには
  タマリンの木の下で夢見ることさえ許さないのだ


20歳のときに書いたこの詩の中で、エドガー・ポーは科学の精神が詩人の感性と相容れないことを主張している。ポーの生きた時代のアメリカは、資本主義が勃興し、社会がそれなりに活気を帯び、現世的で実証的な精神が溢れていた。そんな社会にあっては、金にもならない詩を書くことなど、よほどナンセンスだった。ポーは一詩人として、そうした風潮をあざ笑いたかったのだろう。

ポーは科学をまったく排斥したわけではない。彼の推理小説はむしろ科学的な思考によって支えられてもいる。だがそれはポーにとっては論理としての科学の精神を利用しただけだった。

論理の力はだれをも捕らえて離さないものだから、彼はそれを借りて人々の関心をひきつけようとしたこともある。だがそれは神秘の不可解さを論理によって証明しようとする類いのものである。ポーはやはり基本的には、科学的な精神に敵対するような傾向を強くもっていたといって差し支えない。


SONNET -- TO SCIENCE.  By Edgar Allan Poe

  SCIENCE! true daughter of Old Time thou art!
   Who alterest all things with thy peering eyes.
  Why preyest thou thus upon the poet's heart,
   Vulture, whose wings are dull realities?
  How should he love thee? or how deem thee wise,
  Who wouldst not leave him in his wandering
  To seek for treasure in the jewelled skies
  Albeit he soared with an undaunted wing?
  Hast thou not dragged Diana from her car?
   And driven the Hamadryad from the wood
  To seek a shelter in some happier star?
   Hast thou not torn the Naiad from her flood,
  The Elfin from the green grass, and from me
   The summer dream beneath the tamarind tree?


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このページは、が2010年4月10日 20:01に書いたブログ記事です。

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