先日、再生医療の最近の状況を紹介した記事の中で、豚に人間の臓器を作らせる話に触れた。筆者などは非常に驚いたものだが、それはまだ序の口だったようだ。動物実験の分野では、サバにマグロを産ませようとする壮大な試みが現実味を帯びているというのだ。
この実験に取り組んでいるのは東京海洋大の吉崎悟朗准教授らのグループ。サバとマグロとでは月とすっぽんのように相容れないものと思われるが、教授によればどちらもサバ科に属する親戚同士だから、あながち荒唐無稽な話ではないという。
実際教授らは、ヤマメにニジマスを産ませる実験を行って成功している。どちらもサケ科に属する親戚同士だ。ここで成功した理屈がサバとマグロの間でも当てはまらない理屈はない。
実験の内容はこうだ。精子のもとになる精原細胞をニジマスから抽出し、孵化直後に不妊化したヤマメに移植すると、オスのヤマメにはニジマスの精子が、メスのヤマメにはニジマスの卵が形成される。これらを交配させることによって、立派なニジマスの子がヤマメから生まれたというのだ。
もしこの技術が確立されれば、サバとマグロの間柄だけでなく、およそ同じ科に属する親戚同士の種に広く適用が可能となる。そうすれば絶滅が危惧される動物においても、保存の可能性が飛躍的に高まる。
たとえば猫に虎を産ませる、犬にジャッカルを産ませる。考えただけでぞくぞくするではないか。
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