先日、井上ひさしの死に関連してNHKのテレビ番組「ひょっこりひょうたん島」のことを書いたついでに、やはりNHKが放送していた人形劇「チロリン村とくるみの木」を思い出した。
この番組は「ひょっこりひょうたん島」に先行するもので、1956年からまる8年間の長きに渡って放送された。黎明期のテレビ番組を代表する作品で、テレビ人形劇の原型となったものだ。子どもたちはもちろん、大人たちにも人気があった。かくいう筆者も、義務教育の期間とまるごと重なっていたこともあり、毎日楽しみにしてみていたことを思い出す。
「ひょうたん島」の場合と同じような事情で、ごく一部を除いて現存していないので、それがどんな劇だったかについては、覚えている人の記憶を頼るしかない。
筆者は子どもだったこともあり、体系的には覚えていない。断片的に思い出すところをつなぎ合わせるしかないが、それをもとにしていえば、野菜や小動物を擬人化して、彼らの争いや仲直りの様子を描いていた。
チロリン村というところに、木の実の一族と野菜の一族が暮らしていて、互いに仲が悪く、大人たちは年中いさかいをしている。そこを子どもたちが中に入って、いさかいをやめさせるというような内容だったと思う。悪者ももちろん出てくる。彼らは村の周縁部に暮らしていて、村の秩序を外から破壊するような働きをする。村はそれに共同して立ち向かうことによって、共同体としての一体感をかもし出していく。
人形が良くできていたという印象とともに、声優たちに魅力があった。黒柳徹子、横山道代、桜京美、楠トシエといった個性的な女優とともに、熊倉一雄、藤村有弘、由利徹、八波むと志といった俳優の声が、人形の動きをすばらしいものにしていた。これらの声優の多くは、引き続き「ひょうたん島」にも登場した。
こんな昔のことを思い出して、懐かしい気持ちになるのも、筆者が年をとった証拠だろう。(上の映像はNHKエンタープライズ)
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