花嫁のバラード Bridal Ballad:エドガー・ポーを読む

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エドガー・ポーの詩「花嫁のバラード」Bridal Ballad(壺齋散人訳)

  手には指輪
  額には花飾り
  ドレスも宝石も
  みな思いのまま
  わたしは幸せなの

  あの方が愛してくれる
  でも始めてプロポーズされたとき
  胸がドキッとしたの
  言葉が弔いの鐘のように響き
  あの人の声を思い出したから
  戦場で倒れて死んで
  天国で幸せに暮らしているあの人を

  あの方はわたしを慰めてくれ
  青ざめた額にキスしてくれた
  するとわたしは夢見心地になって
  あの人のお葬式を思い出したの
  そしてあの方を死んだあの人と取り違え
  思わずこうつぶやいたの
  あなたと会えて幸せよ

  こうしてわたしがつぶやいた言葉が
  誓いの言葉となったのだわ
  あの人への誓いを踏みにじり
  わたしの心はつらかったけど
  婚約指輪が物語っているの
  わたしが幸せであることを

  ああ神様 わたしを目覚めさせて欲しい
  わたしは変な夢を見ているのだわ
  わたしの心は苦しさで震えています
  悪魔にそそのかされるのではないかと
  死んでしまったあの人が
  不幸になるのではないかと思って


「花嫁のバラード」と題したこの作品は、ポーには珍しく女性の語り口で書かれている。バラードというからにはひとつの物語。戦争で死んだ恋人を思いながら、ふとした錯覚で他の人を受け入れてしまい、そのために何時までも悔やみ続けねばならなくなった乙女の切ない心を歌っている。

その死んだ恋人の名を、詩の中では D'Elormie といっているが、これは前に出てくる言葉と韻をあわせるために、強引に考え出した架空の名である。


BRIDAL BALLAD.

  THE ring is on my hand,
   And the wreath is on my brow;
  Satins and jewels grand
  Are all at my command,
   And I am happy now.

  And my lord he loves me well;
   But, when first he breathed his vow,
  I felt my bosom swell --
  For the words rang as a knell,
  And the voice seemed his who fell
  In the battle down the dell,
   And who is happy now.

  But he spoke to re-assure me,
   And he kissed my pallid brow,
  While a reverie came o're me,
  And to the church-yard bore me,
  And I sighed to him before me,
  Thinking him dead D'Elormie,
   "Oh, I am happy now!"

  And thus the words were spoken,
   And this the plighted vow,
  And, though my faith be broken,
  And, though my heart be broken,
  Behold the golden token
   That proves me happy now!

  Would God I could awaken!
   For I dream I know not how,
  And my soul is sorely shaken
  Lest an evil step be taken, --
  Lest the dead who is forsaken
   May not be happy now.


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