イギリスの連立政権:転換を迫られる二大政党制

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先日のイギリス総選挙の結果、保守、労働両党とも過半数を得られず、政権の行方がどうなるか注目されていたが、第一党の保守党が第三党の自民党と連立政権をつくることに落ち着いた。二大政党制が定着してきたイギリスで、連立政権ができるのは、第二次大戦中にチャーチルのもとで作られた挙国一致内閣以来である。まさに歴史的な出来事といってよい。

イギリスの二大政党制の歴史は旧い。議院内閣制が確立した18世紀初期にトーリーとホイッグが政権を競い合って以来の歴史を持つ。19世紀には保守党と自由党がディズレーリとグラッドストーンをそれぞれ盟主に戴いて競い合い、交互に政権を担当した。20世紀になると、保守党と労働党が対立する構図が生まれた。

二大政党制を制度的に保証してきたのは、単純小選挙区制である。この選挙制度においては、第三勢力が議席を得る可能性は非常に小さくなる。そこで二大政党制が強固に定着するようになるわけだが、それは逆に言えば選挙制度が作り出した虚構の選択という側面も持っている。民意が、既成の限られた選択肢の中でしか反映されないという意味においてである。

今回の選挙では保守、労働の二大政党への得票率は投票数全体の3分の2にとどまった。このことは二大政党制が、政権選択の枠組みとして万能ではなくなってきていることを物語るものだ。

こうした流れを背景に、組閣にあたってキャスティングボートを握ることになった自民党は、連立の条件として、選挙制度改正を取り上げた。自民党の本来の主張は小選挙区を廃止して、比例代表制を導入しようとするものだが、今回は現行の小選挙区制を基本にしながら、それに比例代表制の要素を一部加えるということで、保守党との間で合意したようだ。

もしイギリスの選挙制度に、自民党の主張するような要素が加わるようになれば、イギリスの二大政党制の伝統は大きく転換していくことになろう。





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このページは、が2010年5月13日 19:18に書いたブログ記事です。

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