マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモールの詩「思い出」Souvenir(壺齋散人訳)
ある夜 色青ざめて声を震わしながら
あのひとが言いかけた言葉を飲み込んだときも
燃えるようなまなじりを吊り上げて
あのひとの眼がわたしを鋭く見据えたときも
決して消えることのない炎に照らされた
あのひとの苦しそうな表情が
わたしの心の底にくっきりと刻まれたときにも
あのひとはわたしを愛していなかった
わたしはあのひとを愛していたのに
マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモールは恋多き女性であったが、その恋は時には報われることのない切ないものでもあったようだ。だがそんな切ない恋でも、マルスリーヌにとっては生きていることを実感させてくれるかけがいのないものだった。
Souvenir Par Marceline Desbordes Valmore
Quand il pâlit un soir, et que sa voix tremblante
S'éteignit tout à coup dans un mot commencé ;
Quand ses yeux, soulevant leur paupière brûlante,
Me blessèrent d'un mal dont je le crus blessé ;
Quand ses traits plus touchants, éclairés d'une flamme
Qui ne s'éteint jamais,
S'imprimèrent vivants dans le fond de mon âme ;
Il n'aimait pas : j'aimais !
関連サイト:フランス文学と詩の世界 >マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール
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