先日(6月18日)、アメリカのユタ州で銃殺による死刑が執行されたそうだ。AFPによれば、ロニー・リー・ガードナー死刑囚(49)に対して、5人の銃殺隊がいっせいに射撃し、瞬時に心臓を打ち抜いたという。
いかにも銃社会アメリカを象徴するような死刑執行方法だと、筆者などは思ったくらいだが、さすがに最近は当のユタ州を含めて、どの州でも銃殺刑はなくなってきているそうだ。ユタ州では2004年に銃殺による死刑執行を禁止したが、ガードナー死刑囚の場合、それ以前に死刑が確定していたので、本人の希望によって銃殺刑が適用されたということらしい。
アメリカは1972年から1976年にかけて死刑を違憲とし、その後また合憲とさせた歴史を持っている。わずか4年間であるが、憲法解釈として死刑は許されないという判断が下された。その結果どの州でも死刑を廃止したのだった。
この憲法解釈はすぐに覆され、死刑は違憲ではないとする判断が復活した。だが違憲でないからといって、積極的に死刑の導入が奨励されているわけではない。アメリカでは死刑適用の是非は各州の法律にゆだねらており、2009年現在30以上の州が死刑を定めている。もっとも執行されるケースはテキサスなど一部の州を除き、非常に少ないという。
アメリカ人が死刑に及び腰な理由は、ひとつにはそれが人間性に反する残酷な行為だとする信念があることと、もうひとつには冤罪による死刑の可能性に対して敏感なことだ。そこで死刑に相当するような犯罪についても、仮釈放の禁止を条件に終身刑にする例が増えているという。
アメリカの死刑制度の歴史においてもっとも普及したのは絞首刑だ。銃殺刑はそれに次ぐ方法で、主に軍隊のなかで行われた。いまでもアメリカの軍法会議では、銃殺刑を死刑の方法として定めている。その後電気ショックや毒ガスによる殺害が取り入れられ、最近では薬物注射が一般的になっている。少しでも残酷なイメージを拭い去ろうとする意図が、その背後にみてとれる。
なお、上の絵はマネの有名な絵「皇帝マクシミリアンの銃殺」。数名の銃殺隊が、いっせいに弾丸を発しているさまが描かれている。
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