深層崩壊:新型土砂災害の恐怖

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昨年(2009)の8月、台湾南部の高尾県で起きた土砂災害は、いままでの土砂災害の常識を破る桁外れなものだった。この土砂災害で小林村という集落が一瞬のうちに消え、500人が死亡したのだが、この村を飲み込んだ土砂の流れは、いままで観測されたどんな土砂災害とも様相をことにしていたのだ。一言で言えば、この災害は深層崩壊という現象の結果だったのである。

その深層崩壊のメカニズムをNHKの特集番組が紹介していた。(深層崩壊が日本を襲う)

普通の土砂災害は大雨によって緩んだ地盤が崩れることによって起こる。それは比較的勾配が急な斜面で、地盤の表層が脱落する現象であることから、表層崩壊と呼ばれている。

これに対して深層崩壊は、比較的緩やかな斜面でおこり、脱落の範囲は広範囲で、しかも地盤の深いところまでが脱落する。規模の大きさからエネルギー量も巨大なものとなり、想像を超えた被害をもたらす。小林村の場合には、渓谷沿いに1キロにわたって展開していた村落があっという間に飲み込まれてしまい、いまはそこに村落があったことを感じさせないほど荒涼とした風景に変ってしまっている。

何故こんなことが起こったのか。原因のひとつが大雨であることは間違いない。小林村の場合、8月7日から9日にかけて降り続いた台風による大雨が2千ミリリットルに達した。実に一年分以上の雨がわずか三日間で降ったわけだから、地盤が緩むのも無理はない。

だが深層崩壊の場合、地盤の特殊なあり方もかかわりを持っている。その特殊な地盤が大雨に反応して巨大な災害を引き起こしたのである。

専門家の調査によれば、深層崩壊を引き起こした場所の地盤は、普通の地盤の状態とは著しく異なっていた。そのような場所の地盤は数千年、あるいは数万年かけて、地下の岩盤に異常な圧力がかかった結果、深いところまでたわみが出来ているという。このたわみによって地盤のなかに無数の亀裂が生じ、それが大雨によって大量の水に浸されると、深層崩壊につながると見られる。

このように、深層崩壊は地盤の状態と大雨とが相乗的に反応しあって起こる現象である。やっかいなことに、台湾では深層崩壊を引き起こす可能性が高い地盤がかなり広範囲に展開しているため、今後、小林村の場合と同じような条件(大雨と地盤)が重なると、同じような悲劇が重ねて起こる可能性が高い。

更に我々日本人にとってやっかいなことは、日本の地盤が台湾のそれと非常に似ているということだ。実際日本でも深層崩壊は起きていた。もっとも有名なのは1997年に鹿児島県出水市でおきたもので、2003年には熊本県水俣市でも起きている。小規模なものも加えると、1990年台には13件、2000年代には21件の深層崩壊が記録されている。

深層崩壊は、日量400ミリリットル以上の大雨によって引き起こされると考えられている。地球温暖化の影響で、日本列島は年を追うごとに大雨に見舞われるようになっているから、今後各地で深層崩壊が起こる可能性は非常に高まるのではないかと憂慮される。

(上の写真:NHKは、深層崩壊に飲み込まれて姿を消した小林村)





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このページは、が2010年6月28日 19:18に書いたブログ記事です。

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